第百二十八話 促しその十三
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「二万で十万となると」
「確かに織田家は兵は弱い」
宗滴はこのことはよくわかっていた、義景にしてもこのことについては間違った見方はしていないのである。
「しかしその槍は長く鉄砲も持っておる」
「鉄砲ですか、あの」
「南蛮より来たという」
「あれがかなりある」
このことが問題だというのだ。
「それこそ何千丁とな」
「何千ですか」
「それだけありますか」
「一つの戦に持って来るのはそのうち二千か」
宗滴は鉄砲の数についても予測した、袖の中で腕を組みそのうえで言うのだ。
「当家にそれだけの鉄砲はない」
「ですな、確かに」
「当家にはそれだけは」
なかった、織田家の鉄砲の数は別格だった。
「本願寺の雑賀衆も多く持っていますが」
「織田家もですな」
「織田家は槍と鉄砲でその弱さを補っておる」
むしろ弱いからこそ備えていると言っていい、そうなることだった。
「そしてじゃ、駄犬の群れも狼が率いればじゃ」
「強くなる」
「そういうことですな」
「織田家の家臣達は粒揃いじゃ」
その目で見たからこそよくわかることだ、百聞は一見に然ずだ。
「それではじゃ」
「とてもですな」
「織田家には勝てませぬな」
「うむ、勝てぬ」
これが宗滴の見立てだった、朝倉家では織田家には勝てないというのだ。
「とてもな」
「では殿のこの度お決めになれたことは」
「どうにもですか」
「危うい」
偽らざる本音の言葉だった。
「朝倉家を滅ぼしかねぬ」
「どうも織田家を侮っておられる様ですが」
「それは」
このことは家臣達にもわかった、それはまさにというのだ。
「当家を滅ぼしますな」
「織田家はどう見ましても」
「国が豊かじゃ」
宗滴はそこから言う。
「民は幸せに暮らし右大臣殿を慕っておる」
「ですな、織田家の家臣の方々も」
「国も家もまとまっております」
「分かれることはない」
このことが大きいというのだ。
「決してな。しかも鉄砲が多く槍も長い」
「鉄砲でありますか」
「鉄砲は朝倉家にもありますが」
「少ないわ」
これが問題だというのだ。
「あまりにもな」
「織田家は何千丁と持っていますが」
「それと比べますと」
「話にもならぬ」
全くだというのだ。
「到底な」
「ですな。織田家の兵は確かに弱いですが」
「具足もよいそうですし」
「うむ、織田家は実際に具足もよい」
実際にそうだというのだ。
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