暁 〜小説投稿サイト〜
八条学園怪異譚
第三十二話 図書館その十四
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 そのろく子の浴衣姿を見てだ、二人は思わずこう言った。
「いや、浴衣ですか」
「まさか浴衣なんて」
「意外ですか?」
「いや、いつもズボンのスーツですから」
「和服のイメージがないんで」
 だからだと返す二人だった。
「そういう感じないんで」
「本当にそこが」
「私は日本生まれですので」
 見れば今は眼鏡も外している、すると知的な美しさではなく優しい美しさになっている。その笑顔で二人に話すのだ。
「ですから本来は和服が好きです」
「けれど普段はスーツですよね」
「そのイメージが強くて」
「博士の秘書を務めていますので」
 それで学園では博士の美人秘書として知られているのだ。
「だからです」
「秘書としての服ですか」
「それなんですね、スーツは」
「そうです、普段着は振袖です」
 着物だというのだ。
「それで寝る時はこれです」
「浴衣ですか」
「そうした服装なんですね」
「そうです、本当に意外だったみたいですね」
「けれど考えてみたら布団ですよね、寝られる時は」
「だったら浴衣もですね」
「浴衣はいいですよ」
 ろく子はにこりと笑って浴衣の長所を話しだした。
「動きやすいですし着ていてきつくないですから」
「だからぐっすり寝られるんですね」
「そこがいいんですね」
「それに女性らしいので」
 浴衣自体がだというのだ。
「それでなんです」
「けれど浴衣ってねえ」
「うん、旅行の時着るけれど」
 ここで二人はお互いに顔を見合わせて話した、表情は少し怪訝なものになっている。
「すぐに着崩れてね」
「恥ずかしい格好になるわよね」
「裾とか胸元とかがね」
「下着が見えそうになったり見えたり」
「そういうのになるから」
「恥ずかしいのよね」
「あっ、私は寝たら動かないので」
 そうなるから大丈夫だというのだ。
「起きても着たままです」
「ううん、だから大丈夫ですか」
「着られても」
「確かに浴衣はすぐに着崩れますね」
 これは浴衣の難点だ、ただし見方によっては長所だ。
「そこが着る人にとっては問題ですね」
「ですよね、どうしても」
「それが怖いです」
「ではお二人は旅行でもですか」
「今はパジャマ持っていってます」
「それを着て寝ています」
 そうしているというのだ、実際に。
「修学旅行はジャージですけれど」
「基本はパジャマです」
「女の子同士でも着崩れていると恥ずかしいですね」
「はい、だから皆浴衣は着ないです」
「少なくとも私達の周りは」
 二人の小学校、中学校の修学旅行ではそうだったのだ。浴衣があっても誰も着なくてジャージやパジャマだったというのだ。
「快適ですし」
「起きても何も崩れてませんから」
「そうですね、確かにジャージはいい
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ