愛と哀 〜再開編〜
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赤く染まっていた。
エルヴは意識を取り戻した。
「エル…ヴ」
目の前には血溜りの上に立つサユイラの姿があった。エルヴはサユイラの傷を見て何かを言おうとしたが、声が出なかった。
「大丈夫だ、心配ない」
「……!」
サユイラはエルヴを拘束している器具をすばやく外していった。エルヴの手足には拘束具の痕がくっきり残ってしまっていた。
腕の拘束具を外し終わり、サユイラの方へ倒れこんだ。
「!?」
サユイラの腕がエルヴを受け止めたと思うと、エルヴの唇に経験したことの無い感覚が走った。
サユイラはエルヴの唇に自分の唇を重ねた。
海からは2人の再会を祝福するかのように朝日が降り注ぐ。
エルヴの涙が裸の肩を濡らしていく。
「怖かった…このまま死んじゃうかもって思った」
長時間の監禁によるストレスが一気に開放され、エルヴの目からは大量の涙がこぼれ、声は回復したとはいえ途切れ途切れでかすれていた。
「すまない…遅くなった…」
サユイラはエルヴの冷え切った身体を抱きしめ、慰めるように呟いた。
「怖くて怖くて…私…」
エルヴはサユイラの腕の中で子供のように泣きじゃくった。
「いや〜実に見事だ、この私を殺すとは」
扉の方から聞こえた声はサユイラがさきほど殺したはずのヒイロのものだった。
「ヒイロ・ユイ!?」
「貴様は私が…否……ッ!!」
サユイラは身構え銃を構えようとしたが、手元に銃はなかった。
「今から火星軍に攻撃をかける、そして勝つ」
部屋の天井から放たれた立体映像のヒイロは、顔に笑みを浮かべ、そう言った。
「私たちは負けない!!」
「否、私は勝つ…必ずな」
エルヴは反論に即答したヴァーチャルのヒイロに向かって走り出した。
「冷静になれエルヴ!!」
サユイラの声も虚しく、エルヴは床から現れた刺に気づかずに突っこんだ。
エルヴは無数の刺の中央に入った途端、身体が後方に突き飛ばされた。エルヴと入れ替わるように入り込んだサユイラに、刺の先から電撃が放たれた。
電撃は、発生源から最も近いサユイラに集中した。
「…あぁ!!」
「ぬぐ…う…ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
エルヴの目の前で放電の餌食になるサユイラは力なくその場に倒れこんだ。
「死ぬなよ…サユイラ」
立体映像が消えると同時に放電は止んだが、サユイラの目は生命力を失っていた。右足からは大量の血が流れ、服は燃え上がる。
「サユイラァァァァ!!!」
火星圏ネオ・バルジ宙域では、火星軍がブラックファングの攻撃に必死に抵抗していた。
「岩を使って左右から回り込め!!正面は防衛フォーメーションで耐えろ!!」
帰星した直後のビクトゥーリアでは、ミシェルが指揮をとっていた。
「変形必須電力充電完了まであと106!」
「ニル小隊全滅!」
「敵機以前進行中!
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