第九話 〜元凶〜
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に膝をついた。
こんなもんじゃない。
俺は人間越しに拳をくらってあれだったのだ。
もし豪帯に避けられでもしてたら…。
それを想像して背筋が凍った。
こいつは確かにどうしようもない馬鹿だ。
だが、徐城一の怪力は嘘では無いらしい。
それどころかこの国一なのかもしれない。
そう思うと、自分の手元にいるこの黄盛の怪力に心強さを感じると共に、後ろで荷車の上で縄に縛られて気絶している豪帯に気の毒さを感じた。
人間越しであれなのだ。
それを直接、しかもあんな小さく華奢な身体で受けたのだ。
もしかしたらこいつは目を覚まさないかもしれない。
…そうなると凱雲が黙ってはいないだろうが、だが黄盛がいる。
最近は全く頼りにならなかったこいつだが、こいつの腕力は身を持って体感したんだ。
腕っ節ならあの凱雲に負けるはずはない。
現に既に勝っているしな。
『お、お許しを…』
『…ふん。馬に乗るのを許す』
『!?は、ははッ!!ありがたき幸せ!!』
ボロボロになりながらも許しを乞う黄盛の姿を見て流石にこれ以上はという気持ちと筋肉痛な身体に鞭を打って殴り続けたのもあって疲れたという理由で許してやる事にした。
こいつでなければ拷問の末に打ち首の所だ。
そうこうしながら森の中の道に馬を進めた。
行軍を続けていると月明かりだけの森の暗がりの中で先の方に村のようなものが見えた。
『洋班様!見えましたぞ!』
ギロッ
『ひっ!?』
『…』
こいつは話を聞いていたのか?
まったく、夜襲だというのにこいつは…。
『…声でけぇよ』
『す、すみません…ッ』
普段なら有無も言わさずに殴りつけるところだが…。
『ふぁ〜…ねみ。』
今の俺は深夜という事もあり、行軍の途中で眠気に襲われていた。
既に身体中の関節も動く事を拒み、必要最低限の動きしか許容しない。
『…よ、洋班様?眠いのでございますか?』
『あ?…あ〜』
『でしたら蕃族はまだこの村だけではございませんし、少し引いた所に陣を構えて明日を待つのも…』
『あ〜?せっかく目の前まで来たんだ。さっさと片付ければいいだろうが』
『はッ』
『では後は任す。さっさと終わらせて陣を敷け』
『了解しました!おい貴様ら!』
夜の暗がりの中でまたも黄盛の声が響いた。
そんな黄盛が苛立ちを覚えたが、
もう言うのも面倒だと思いその行為を不問にすることにした。
『これより目の前の蕃族に夜襲をかける!』
ザワザワッ
『いいか!』
オーッ!
『一気に叩き潰す!』
オーッ!
『我に続け!』
その叫び声と共に幕は切って落とされた。
兵士達の雑踏はさっきまでの夜の静けさを飲み込んで
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