第九話 〜元凶〜
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も部屋までお供をしてきたようだ。
…まったく。
ここの田舎共とは違い、こいつは媚の売り方をしっかり心得ているようだ。
こんな些細な事をしてでも従順さや献身さを見せてこその目下だろうに。
だから奴らはこんな辺鄙な場所から出られないのだ。
出来損ない共め。
『あー、待て待て』
『はい?』
俺は黄盛を呼び止めた。
急に呼び止められた黄盛は何故呼び止められたのかわからないといった表情をしていた。
…まぁ無理も無いか。
こいつは"幾つもの戦場を経験してこられたのだから"な。
『なー、その事なんだがな?』
『その事と言いますと?』
あーじれったい。
そのくらい察しろ筋肉馬鹿め。
『その明日の準備についてだよ阿保』
『それがどうかなさったのですか?』
イラっときた。
だが、今日初めて人を切った事で悲鳴を上げていた筋肉が急な動きを拒んでいた。
そのせいもあって、俺は枕元の机にある小物を握るも投げ付ける事をやめた。
『はぁー…よっと』
精一杯の力で身体を起こす。
『お前は何か物足りねぇって思わねえか?』
『?』
『はぁー…』
既に暴力を諦めた分溜息しか出なかった。
説明するのも面倒だがぐっと堪えた。
『いいか?今日の賊狩は俺の初戦なんだぜ?つまり、今日は俺にとっては記念すべき日なんだ。』
『はぁ…』
『だが、実際その記念すべき戦はどうだった?』
『どう…と言われましても』
ガツッ
『あだッ!?』
『だーかーら!!俺が言いてえのは記念すべき日にしてはしょぼいんじゃねえかって事だよ!』
等々手元の小物を投げ付けた。
そうだとも。
俺様の記念すべき初戦が、こんなにも地味でいいはずが無い。
俺はもっと地方で野ばらしにされている賊共何万を根絶やし、そこの民草から感謝され、官士共からも一目置かれ、ついには都より将軍位を賜ると共に"皇宮校尉"として召し抱えられ、晴れて皇帝のお膝元で出世街道まっしぐら…。
それが俺の計画だった。
だが…。
『実際に討ち取った賊の規模はなんだ?たかだか100〜200そこらの小賊ではないか。そんなもの報告したところで笑われるのが落ちじゃないか』
『はぁ…確かに誇れた功績では有りませんが…』
『そこでだ!』
『?』
俺は手招きして黄盛をそばに寄せる。
きっとこれを聞けばこいつも驚くだろうよ。
ちょっとした期待に胸が膨らましながら屈んだ黄盛の耳元に顔を近ずける。
『…蕃族だ』
『蕃族?』
本当に察しの悪いやつだ。
『蕃族を俺らで根絶やすんだよ』
『な、なんと!?蕃族を我々で!?』
ドガッ!
『あだッ!?』
『声がでけえんだよ!』
『す、すみません!』
こい
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