暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
崑崙の章
第3話 「治療できないからです! 少し黙って!」
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
……入っても大丈夫です?」
「ああ、黄忠様ですね……どうぞ」

 その声に扉を開けると……
 寝台の上に細い布で作られた包帯で、ぐるぐる巻きにされた桔梗の姿があった。

「桔梗……?」

 顔色は若干青いものの、呼吸もしっかりしており、時折痛みにうなされているようだ。
 よかった……生きてる。

「このお客さんの話じゃ、傷に比べて思ったより出血が少なかったので、助かったのではないかと……」

 そう言う宿の主人が視線を向ける先には、北郷さんが壁に背を預けて眠っていた。

「北郷さん……」
「大した方ですね……先程まで起きていたのですが、家内に甘酒作る様に指示して、市場が開くまで寝るとおっしゃってからすぐに寝ちまいました。相当疲れたんでしょうな」
「……そう、ですか」

 見ず知らずのわたくしの友人のために、そこまで……
 にもかかわらず、不覚にも眠ってしまった己を恥じた。

「ん……む……わしは……」
「桔梗!?」

 目覚めた桔梗に、わたくしが縋りつく。

「ああ……よかった」
「紫苑……お主か。うっぐ……」
「……まだ痛む?」
「……かなりの。あの小僧め……治療する前より痛むではないか」

 桔梗がニヤリとしながらも顔をしかめる。

「えっと……すいません」

 宿の主人が、申し訳なさそうに声を掛けてくる。

「その小僧……お客さんから伝言です。貴方がもし起きたら、少しだけ甘酒を飲ませろと」
「甘酒じゃと……そんなものより酒を」
「あ、お酒は絶対に飲ませるな、だそうです」
「な、なん、じゃと……」

 さすが桔梗。
 こんなときでもお酒を飲みたがるなんて……

「本当は麹から作る甘酒の方がいいんですけど……うちには酒粕しかないので、砂糖を少しだけ入れたものが作ってあります。すぐにお持ちしますね」

 そういって宿の主人は、部屋を出て行った。

「むう……い、痛みが酷いのに好きなものを飲ませんとは。儂の体が動けるならば、轟天砲で穴だらけにしてやるものを……」
「桔梗……助けてもらった恩人に、そんなこと言ってはダメよ」
「し、しかしの、紫苑。わしはあんな治療など見たことも聞いたこともないんじゃぞ?」
「破傷風については、わたくしも知っているわ。全身痙攣して……最後は死んでしまう」
「な、なんじゃと……」

 そう……彼が言った言葉。
 『破傷風になりたいんですか!?』 この言葉がなかったら、わたくしも北郷さんに全てを任せるようなことはしなかった。
 破傷風。それこそが原因で死んだ……あの人の死因なのだから。

「お待たせしました」

 宿の主人が甘酒を持って戻ってくる。
 熱々なのかと思ったら、かなり冷ましてあるようだ。

「熱す
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ