崑崙の章
第3話 「治療できないからです! 少し黙って!」
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…」
「もごぉっ!?」
「で、これを繰り返し……」
「もごぉぉぉぉぉぉっ!?」
うんうん。
肉に刺してー出してーまた刺してー……
麻酔無しでやっているのだからそりゃ痛いよな。
俺も何度かやったことあるが……大丈夫だ。
そのうち痛みが快感に代わればいいと念じて……気絶するから。
「き、桔梗……ほん、ほんとにこれ、治療なんですか?」
黄忠さんが恐々としながら尋ねてくる。
かなり顔が蒼白になっている……無理もないか。
この時代に縫合技術なんてあったかどうか。
「大丈夫……こうしないと失血死します。ただでさえここにくるまでに大量に血を流した様子……人間ってね、全身の血の三分の一も減ると危ないんです。しかもこの世界じゃ輸血も出来ない……血を失うのは非常に危険なんですよ」
なにしろ血液型もわからないのだ。
判別方法がない。
点滴は何とかなるかもしれないが……
「そうだ……麹か酒粕、甘酒ってありますかね?」
「甘酒? 今はないけど……酒粕ならあるよ」
「あ、あるんだ……なら問題ないか」
甘酒って……いつの時代からなんだろうな。
まあいいか。
きゅっとしばって……よし。
「ふう……背中の縫合終了っと。後は消毒して……さて他の傷をって、あれ?」
気がつくと、厳顔さんが動かなくなっている。
「桔梗? 桔梗!?」
黄忠さんの声が響く。
「死なないで、桔梗ーっ!」
「いや、死んでないから」
女将さんは、ピクピクと動く足を押さえてそう呟いた。
―― 黄忠 side ――
桔梗の手当てが終わった翌日。
気がつくと、寝台で目が覚めた。
「あら……わたくし、いつの間に」
確か昨日は、桔梗の手当てが終わった後。
後……どうしたのかしら?
「ええっと……」
少し重い頭を振り、起きようとする。
と、胸の服を引っ張る手があった。
「むにゃ……おかあさん」
あら。
璃々が、私の服を掴んで眠っている。
「ということは……ここは昨日泊まった部屋?」
窓から外を見れば、すでに陽は高く昇っている。
わたくしは、璃々の手を静かに掴んでいる服からはずすと、寝台から起き上がった。
衣服は昨日のまま……どうやら気を失ったか眠り込んでしまったらしい。
「! そうだわ、桔梗……」
昨日、あれだけのことがあったのだ。
桔梗は無事かしら……?
急いで部屋から出ると、北郷さんのいる部屋の扉を軽く二、三度叩く。
「はい」
中から男の人の声。
これは……宿の主人かしら。
「すいません。黄忠ですけど
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ