崑崙の章
第3話 「治療できないからです! 少し黙って!」
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蜜蝋でもなんでもいいですから」
「は、はい。すぐに用意させます……おい!」
主人は従業員らしき人に、俺の部屋に大量の灯りと持ってこさせる。
よし、あとは針を乾かして……糸を通して、針の先端を軽く焼いて再度消毒させておく。
「終わりました!」
風呂から黄忠さんの声がする。
よし!
「そっちの今冷ましているお湯はそっちの瓶に……そう。できれば何本も用意してください。後、塩! 食塩を俺の部屋に置いてください!」
そう指示して厨房を出る。
風呂へと戻ると、背中から血を流して、ぐったりした様子の彼女がいた。
お湯で洗い流して、泥と血小板で止まっていた血が流れ出したのだろう。
「もうしばらく我慢してくださいね……よっと!」
俺は彼女を抱え上げて部屋へと運ぶ。
寝台の上には綺麗な敷布が用意してあった。
「よっと。降ろしますよ」
できるだけ静かに彼女を降ろす。
彼女はぐったりとして何も答えない。
「傷は……見えるだけで十八。全て槍や刀傷ですね……矢は喰らいませんでしたか?」
「……矢は、ない。十人がかりで一度に攻められての。さすがに捌ききれんかったわ」
「背中の傷が一番酷いな……まずはここを綺麗にしましょう。黄忠さん、彼女の口に何か布を噛ませてください」
「布……ですか?」
「はい。かなり痛みますから、舌を噛まない様にするんです」
「……では、これを」
黄忠さんが懐からだしたスカーフのような布切れ。
かなり複雑な刺繍がしてある。
「……いいのですか? ぼろぼろになりますよ?」
「桔梗の……厳顔のためです。惜しくはありません」
厳顔……この人の名前か。
黄忠と呼ばれる人が、高価なものを惜しくもないというほどの相手……名のある武将なのだな。
「では、彼女の口に噛ませて……しっかり身体を固定させてください。えっと……厳顔さん! これから白酒で背中を消毒します。かなり痛みます。歯を食いしばって耐えられますか!?」
「もご……当然じゃ!」
「その意気やよし……頑張ってくださいよ!」
俺は酒と水で手を洗った後、用意してある湯冷ましの瓶に、食塩を少量混ぜていく。
詳しい分量?
一リットル中に九グラム。詳しい計りなんてないが、そこは慣れで覚えた感覚だ。
出来上がった生理食塩水を用意して……先程手を洗った酒瓶を再度とり、厳顔さんの背中の傷に沿って少量ずつ垂らしていく。
「−−−−−−−−−っ!!」
ビクンッ、と跳ね回る厳顔さん。
痛いよね、うんわかる。
でも耐えてくれ……これからもっと痛いんだ。
「手が足りない! 誰か彼女の足を抑えてくれ!」
「あたしにまかせな!」
扉の前で覗き込んでい
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