崑崙の章
第2話 「石を掘りにいくんですよ」
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のでは……」
「……そう、かな? そうかもしれませんね。ここ数日は野宿でしたし」
それぐらいで疲れるような鍛え方はしてない……はずなんだがなぁ。
「わたくし達が泊まっている宿に空き部屋があったはずです。宜しければそちらに泊まられては?」
「……そうですね。そんなに急いでいるわけでもありませんし、今日はここに泊まりますか」
「やったー! お兄ちゃんと一緒ー!」
璃々ちゃんが、手を挙げて喜んでいる。
ははは、懐かれちゃったか。
「えっと、北郷さんはどちらまで?」
「西です。とりあえずは成都を目指しています」
「ずいぶん遠くまで行かれるのですね」
黄忠さんが驚く。
まあ、そりゃそうか。
ここから直線距離でも、優に五百キロはある。
東京から大阪まで歩くようなものだ。
まあ……ここから宛までも同じくらいの距離があるけど。
「実際は南回りの盆地から回り込みますので……遠いですけど苦ではないでしょう」
「そんなに遠くまで……一体何をしにいかれるのですか?」
なにをしに、かあ……
まあ、言っても信じられないだろうし、別にいいか。
「石を掘りにいくんですよ」
―― 厳顔 side ――
「将軍……」
「……何も言わんでよい。すぐに出立の準備をいたせ」
巴郡から連れてきた三千の兵。
それらに陣を払うように指示を出す。
(まったくの無駄足じゃったか……)
劉表殿には江賊のことで、様々な便宜を図っていただいた。
それゆえに、今回の要請でその恩義の一片なりともお返しできると思っていたのだが。
(紫苑の奴にも会えず仕舞いじゃったか……)
劉表殿に仕えている紫苑――黄忠とはウマがあった。
かの者の結婚には、わしも参列したほどじゃ。
その紫苑と久しぶりに一献できると楽しみにしておったのじゃが……
「あ、将軍!」
「なんじゃ?」
一人の兵が駆けてくる。
「昨日の夜、黄忠と名乗る女性からの伝言があったそうです」
「なに!? 黄忠じゃと?」
「はい、将軍は昨日お酒を召してお休みになられていたので……今朝伝令がお伝えしようとしたところ、すでにお出になられた後、と」
「何故、早く伝えんかぁ!」
ばか者がっ!
「ヒッ! す、すいません……」
「まあよい! それでなんと?」
「はい……白帝城下の宿で待つ。伝令でもいいので来られたし……以上です」
黄忠が、白帝城に来ているじゃと?
確かあやつは、ここより少し東にある夷陵の太守じゃったはず。
なにゆえ城下などに……?
「そうか……わかった。お前達は陣払いが済み次第、各部隊長に従って巴郡へ戻れぃ
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