第四十六話 また一人その九
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中田は笑顔でこう上城に言った。
「これからどうするんだい?」
「今日のことですか」
「戦いのことはもう決めてるよな」
「はい、それは」
既にだとだ。上城も答えることができた。
「変わらないです」
「止めるよな」
「そのつもりです」
「だよな。それじゃあな」
「今日はこのまま帰ります」
酒も入っている、それならだった。
「それでお風呂に入って」
「寝るよな。ただな」
「お酒飲んでる時代はですね」
「注意しろよ」
酒を飲んで風呂に入ることは危険だ。例えどんな時でもだ。
それで中田も上城に今こう言って注意したのだ。
「心臓とかにくるからな」
「そうですよね。だから」
「注意してくれよ」
風呂に入ること自体はいい、だが注意はしろというのだ。
「死なない様にな」
「ですね。それは気をつけます」
「戦いでも死にたくないだろ」
「できるなら」
上城としても死にたくはなかった。これは人間として、生きているものとしての当然の本能でありしかも死に方についてもこう言うのだった。
「長生きしてからあっさりと」
「誰だってそうして死にたいよな」
「はい、ですから」
「今そんな下らない死に方なんてな」
中田も笑って言う。
「するもんじゃないさ」
「そうですよね」
「自殺とかそういう死に方はするものじゃないさ」
「自殺もですか」
「ああ、それだけは絶対にしないでくれよ」
中田はその目に何か、彼だけが見える何かを見てこのことを言った。
「自殺っていうのはな」
「いい死に方じゃないですよね」
「人によっちゃ一番卑怯な解決の方法って言うさ」
これは自殺というものを知っている人の言葉だ。知っているからこそ自殺というもののそうしたことについて言えるのだ。
「逃げることだってな」
「自殺はそういうものなんですね」
「俺はそう思うよりもな」
中田はその目に彼だけが見ているものを見ながら上城に述べていく。今は酒が彼をそうさせていた。その中での言葉だった。
「悲しく思うな」
「自殺についてですか」
「自分を痛めつけるってのは悲しいさ」
このことはこのうえなくだった。やはり中田も自殺を知っている、それでその自殺についてこう言っていくのだった。
「それと一緒で。自分が死んでもまだ残る人がいるだろ」
「家族や友達ですね」
「家族やダチが自殺するっていうのはな」
過去、それを見ている言葉だ。
「思い出すだけで辛いんだよ」
「そうなることなんですね」
「そいつがいい奴だったらそれだけ思えるんだよ」
「辛いとですか」
「辛いし寂しいし悲しいしな」
友人が自殺してしまった、そのことを思うとだというのだ。
「馬鹿野郎がとも思うしそう思うことも辛いんだよ」
「人にそういう思い
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