第三十一話 怪談話その十三
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「怖いんですね」
「まあそうなるわ」
「山も海もじゃけえ」
「山も、なんですね」
「海だけでなく」
五人はこのことをあらためて認識した、結局のところ山も海も恐ろしい一面を備えているのだ、そしてそれは自然だけではなかった。
景子はここでこう言ったのだった。
「街も出るのよね」
「街?」
「街もなの」
「こっちは幽霊もあればね」
まずはこれだった、学園では特にそうした話が多いが街自体にもあるのだ。
「あと変質者とかいるじゃない」
「あっ、神戸にもいたしね」
「そうそう、酒鬼薔薇とか」
あまりにも有名な少年犯罪者である、その悪名は今も残っている。
「街は人ね」
「そっちの方が怖いわよね」
「神戸ってそういう話もあるで」
ここで高見先輩はその神戸の話をしてきた。
「実際な」
「多いんですか」
五人は先輩の今の言葉にも顔を向けて問うた。
「実際に」
「そうなんですか」
「そや、酒鬼薔薇は変質者やけどな」
その他にもだというのだ。
「幽霊の話も多いで」
「幽霊ですか」
「そっちですか」
「結構あるで、神戸のあちこちにな」
「ううん、あちこちって」
「そこまでなんですか」
「そうやねん、戦争中死んだ人の幽霊とか」
神戸大空襲でだ、それで死んだというのだ。
「その後に抗争で死んだ人もね」
「あっ、ヤクザ屋さんとですよね」
「外国人が衝突したっていう」
「うちは岡山やからまた聞きやで。クラスメイトの子に聞いたんや」
つまり生まれも育ちも神戸の娘に聞いたというのだ、この辺り高見先輩は岡山出身なので今一つ詳しくないところもある。
「戦争の後警察の力とか弱くなってとにかく公の権力が滅茶苦茶なっててな」
「その間にですか」
「ヤクザ屋さんが好き勝手しだしたんですね」
「ちゃうちゃう、ヤクザ屋さんが見かねてなんや」
大抵はここでヤクザが暴れる、しかし当時の神戸はというと。
「暴れ回る外国人から一般市民守ろうとしてや」
「それで、なんですか」
「ヤクザ屋さんが外国人と戦ったんですか」
「そうだったんですか」
「おるやろ、ならず者国家」
最早これだけで話が通じる。
「核兵器持ってる」
「ああ、あの国ですか」
「あそこですか」
「ああいうところや」
具体的な国の名前は言わないがこれで通じることだった。
「ああした国の連中が暴れて好き勝手やってや」
「警察が弱まってる時にですか」
「好き勝手やって」
「そやねん」
その結果だというのだ。
「ヤクザ屋さんが自警団になってたんやで」
「それでその間で死んだ人がですか?」
「幽霊にもなって」
「そういう話もあるかも知れんし」
その他にもだった。
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