一話
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で待っていて下さい。あ、ちょっと待ってください」
「ほら、母さんから電話が来たぞ」
その言葉にチビッ子はすぐに笑顔になり、電話で親と話を始める。そしてチビッ子が何度か頷いた後、俺に携帯を渡し、ニッコリ笑って俺の手を握った。
『すいません、よく迷子になる子でして。本当にありがとうございます』
「いえいえ、大事なくてよかったです。それじゃ今から向かいますんで」
再度チビッ子の親からお礼を聞き、少女と一緒に親のいるデパートまで歩き出す。
絶対アルバイトには遅刻するだろうが、俺の中じゃどっちが優先かなんて考えるまでもないからな。
◆
「もうそろそろ着くぞ」
「ホント!?」
あれから数十分経ち、すっかり話せるようになったチビッ子とほのぼのトークを繰り広げながら、親が待っているデパート近くまで歩いて来た。
それにしてもチビッ子と話したりするのがこんなに面白いとは思わなかった。
「この辺って聞いたんだけどな。見える?」
「人がいっぱいでわかんない」
「よし、それじゃこれでどうだ!」
「うわー、たかーい!!」
肩車をすると、チビッ子は目をキラキラさせながら上ではしゃぎ始める。
これが父性というやつか、可愛すぎるぜマジで。
「あ、お母さんだ!」
そういって頭をぽんぽん叩いてくるので降ろしてやると、チビッ子は全力で親に向かって走っていく。
信号が赤になっているのに気づかずに。
「ちょっと待て!!!」
俺の制止も聞こえないようで、チビッ子は横断歩道を渡っていく。だがこの時代、昼間の大通りで車が全然通らないなんてことはなく、チビッ子に向かって一台の大型トラックが中々のスピードで突っ込んできた。
それでもチビッ子は気づかない。
チビッ子の母親が大きな悲鳴をあげ、周囲の人間を巻き込んで大騒ぎになった。
そんな中で、俺はチビッ子に向かって大きく足を踏み込んだ。
考えなしに走り出したけど、これってやっぱりあの親二人の血のせいだよな。
チビッ子がようやくトラックに気づき、泣き叫ぶように悲鳴をあげる。
俺にはそれが助けてといっているように聞こえた。
トラックに乗っていた人が今更になって気づいたのか、急ブレーキがかかったが、どう考えても間に合わない。だが俺にだって意地がある。毎日神社に通って体を鍛え、両親の死に様を見て育った俺には、もうチビッ子を助けることしか頭になかった。
(あの子助けて死ねるんならそれでもいいって思ってしまうくらい、俺にもあの親二人と同じ想いがあるってことだよな)
自分も一緒に助かる気なんて毛頭ない。だってそうだろ? このタイミングで少女を助けることだけでも
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