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ドン=ジョヴァンニ
第二幕その十九
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第二幕その十九

「遠くへ行ってしまいました」
「遠くに!?」
「一体何処に」
「恐ろしい人が来ました」
 彼は震えた。あの時のことを思い出したのだ。そうしてその中で語るのであった。
「あの石像が」
「石像!?」
「若しかして」
 オッターヴィオはいぶかしんだがアンナにはすぐわかったのだった。
「御父様が」
「はい、そうです」
「そうだったの」
 ここで遅れてやって来たエルヴィーラが頷いた。
「あの恐ろしい石像はアンナさんの」
「そうだったんですよ。あの方に悔い改めよと迫って」
「それで?」
「どうなったんだ?」
「あの方は悔い改められるのを拒まれて」
 このことも話すのだった。
「そして」
「そして?」
 皆身を乗り出さんばかりにしてさらにレポレロに問うた。
「地獄の炎から悪霊達が出て来まして」
「悪霊達が」
「まさか」
「そのまさかですよ」
 レポレロはそれを否定しなかった。しなかったというよりはできなかった。何しろ他ならぬ自分自身が見たものであったからだ。できる筈がなかった。
「出て来てそれで地獄に引き込んだのです」
「何ということ」
「恐ろしいこと」
「あの方は堂々と行かれましたよ」
 自分でもわからなかったがジョヴァンニの最期まで話すレポレロであった。
「地獄にも美女がいるだろうと仰って」
「そう。あの人らしいわ」
 それを聞いて何故か納得するエルヴィーラであった。
「それもまた」
「全ては天が復讐してくれたんだ」
 オッターヴィオはこうは言うがそれでも少し寂しそうであった。
「僕はこれでもう安らぎを得た」
「そうね」
 アンナも何処か力が抜けてしまった感じであった。
「もうこれで」
「アンナ、僕達を悩ませるものはもうなくなったよ」
「ええ」
 その力が抜けてしまった感じが続くアンナであった。頷いてもそうであった。
「そうね。本当に」
「じゃあこれで僕達は」
「少し待って」
 婚礼に関してはこう返すのだった。
「それは。少し待って欲しいの」
「それはどうしてなんだい?」
「まだ悲しみは完全に消えていないから」
 だからだというのである。
「だから。御願い」
「そうだね」
 アンナのその申し出に何故かオッターヴィオも素直に頷いた。若さ故の性急さは何処かに消えてしまっていた。
「恋する人は愛する人の望みに従わないといけないからね」
「私は修道院に入りましょう」
 エルヴィーラの言葉にも感情が薄れていた。
「そしてそこでもうずっと」
「ツェルリーナ」
「マゼット」
 彼等はお互いに顔を見合わせていた。しかし先程までより楽しそうではなかった。
「じゃあ家に帰って」
「そうね。幸せな生活をはじめましょう」
「あたしも少し休
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