追想〜灰色の夢幻〜
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少し昔の頃の夢を見た。
少し昔、と言っても何年前かすら覚えていない。かと言ってそこまで昔の事でもない。ある一つ・・・・・・・いや二つの出来事によって僕の記憶の大半が埋め尽くされているのだ。・・・・・・・そう、碧空に浮かぶ黒鉄の檻の、血塗られた剣の物語によって。
・・・・・・とまぁ少々中二臭い思考と共に起床した訳だけれど。事実僕はあの夢がいつの出来事なのか思い出せない。夢の中で僕は幽霊の様に漂っていて、少年時代の僕と、背の高い痩せぎすの青年が遊んでいる光景をすぐそばから見ているのだった。サッカーに野球、鬼ごっこなどと遊びの内容は夢を見るたびに変わるけど、最後、転んで泣く少年の僕を優しく青年が起こし、頭を撫でてくれる。いつも夢はそこで終わりを告げるのだった。
「・・・・・・いい加減起きようか」
予定までまだまだ時間はある。さっさと準備をしてしまおう。
・・・・・・あれ?今日の約束って、何だったっけ?
ぴぴぴぴぴ!と鳴り響く目覚ましの音に僕は飛び起きた。そしてベッドに突こうとした手は空を切り、床に落下して激しく悶絶した。
「いててて・・・・・・・二重で夢から覚めるとか初めてだよ畜生・・・・・・」
とぶつくさ言いながらも手早く箪笥から部屋着を出し、寝間着から着替える。何年も繰り返してきた一連の動作であり、肌の感触が綿の寝間着からシャツに変わるところから僕の一日は始まる。
キッチンにて。トーストを焼きつつ手早くソーセージを焼き目玉焼きを作っている。父も母も昨日大きな手術があったためまだ起き出していない。
カロリーハーフのバターを塗ったトーストを食べ終わり、普通より遥かに早い時間に僕は家を出る。只今六時四十五分。それが僕の日課だった。行き先は、大切な人の家。
「ん・・・・・・・」
寝慣れた(言い方は変かも知れないけど)布団から起き上がる。手早く布団を畳んで押し入れにしまい、冷蔵庫からミネラルウォーターとバターを出し、焼いていないトーストに塗ってさっさと食べ終わる。
「あ、寝癖ついちゃってる。」
櫛を使って伸ばし始めた髪を整える。彼から『髪を伸ばした方がかわいいよ』と言われて伸ばし始めた髪。我ながら単純だと思うけど、それくらい自分はあの人のことが大好きなんだと思うと、思わず頬が緩んでしまう。
ほら、ベルが鳴った。
「おはよう!新川君」
扉を開ける。大好きなあの人が待つ、外の世界へ向けて。
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