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ドン=ジョヴァンニ
第二幕その十二
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第二幕その十二

「これはやっぱり」
「私をからかっているのだな」
 だがジョヴァンニはこう考えていた。そして自分の後ろに立っている石像を見た。それは。
「これはあれだな」
「ええ、あの人ですね」
「あの騎士長だ」
 彼だというのである。見ればそれはまさにあの騎士長の石像であった。
「もう葬られていたのか」
「というか生きている間にお墓まで用意していたんですか」
 実に用意がいいと言えることであった。
「それですぐに葬られて」
「ふむ。それでレポレロよ」
「はい」
「御前は読み書きができるな」
 だからこそ傍にいつも置いているのだ。レポレロはジョヴァンニの秘書的な役割も果たしているのである。
「確かな」
「その通りですけれど」
「ではこの碑銘を読んでみるのだ」
 石像の下に書かれている碑銘を指し示して彼に命じるのだった。
「この碑銘をな」
「暗くてどうも」
「目は慣れてきていないか?」
「まあ一応は」
 その碑銘を見ながら主に答えている。
「ええとですね」
「うむ。何と書いてあるのだ?」
「わしをこの世の果てに追い悪辣な者に」
 まずはこう書かれているのであった。
「ここで復讐を待つ・・・・・・これって」
「ふん、言うものだ」
 ここまで読んでその言葉に暗い顔になるレポレロであったがジョヴァンニはいつものように平然として返すのであった。
「それではだ」
「ここを去られた方がいいと思いますけれど」
「馬鹿を言え」
 やはりそうはしないのであった。
「それではだ」
「それでは?」
「この石像に言おう」
 その石像を見上げての言葉であった。
「これから宴に招こうとな」
「えっ、本気ですか!?」
「そうだ、本気だ」
 ジョヴァンニは顎が外れんばかりに驚くレポレロに対して平然と答えた。
「私は本気だ」
「そんな。あれを見て下さいよ」
 レポレロは主のその言葉に対して震える手で石像を指し示して言うのだった。
「あの目を」
「目をか」
「あたし達を見てるじゃないですか」
 見ればその通りだった。確かに二人を見下ろしてきている。
「それでもですか?」
「そうだ。それでもだ」
「今にも動いて言葉を出してきそうだ」
「それならそれで面白い」
 ジョヴァンニの態度は変わらない。
「では伝えよ」
「勘弁して欲しいですよ」
「言えば金貨五枚だ」
「わかりましたよ」
 褒美に弱いレポレロの性格をよく知っているジョヴァンニの作戦勝ちであった。
「それじゃあですね」
「伝えるのだ」
「あのですね」
 こう前置きしてから語るレポレロだった。
「偉大なる騎士長殿であられた高貴な石像様」
 こう彼に声をかける。しかしここで言葉を止めて。
「やっぱりもう怖くて
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