光さす部屋
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になりますか?泣きたい時には泣いて、笑いたい時には笑いなさい。ご自分の気持ちに正直になるのですよ。パウルさまがどんなに泣いても、わたくしは怒らないでしょう?」
パウルはこくりと肯いたが、未だ何かを躊躇っているようだった。ラーベナルトは目を細めて笑うと、そっと言い添えた。
「よくお耐えになりました。痛かったですね」
執事のその言葉に弾かれたように顔を上げ、パウルは細い腕をラーベナルトへと伸ばした。自分の全てを包み込んでくれるような温かい執事の胸に、ぎゅうっとしがみついて目を閉じる。
もう、泣きたいという気持ちはなかった。泣き腫らすよりも効果的なラーベナルトの言葉に、少年の中のわだかまりは溶けていったようだった。
しばらく屈んだままパウルの体を支えていたラーベナルトは、やがてそのまま軽々と少年を抱き上げた。早くも先の展開を予測した少年が、嬉しそうに目を輝かせる。
「さて、今日は何を観ましょうか」
優しく囁く執事の顔を右手で弄びながら、パウルは少し考えるように視線を泳がせた。5秒ほど沈黙した後、
「犬のディスクにしようよ、ラーベナルト」
と、屈託のない笑みを浮かべる。子どもの笑顔は天使のようだと、誰が言い出したのかは知らないが、良く言ったものだ。ラーベナルトは悪戯っぽく笑うと、少年の色鮮やかな義眼を見つめて言った。
「そういたしましょう。実は、こっそり新しいディスクを仕入れてございます。今度はダルマチアンという犬のお話ですよ」
歓声を上げる少年を胸に抱いたまま、ラーベナルトは光ディスクを取り出した。
オーベルシュタイン家の昼下がりの団欒は、始まったばかりであった。
(Ende)
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