第伍話 《真っ黒》〜前編〜
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ンはウインドウを呼び出し、オブジェクト化されたマガタマ《シラヌイ》を口に放り入れる。
周りに炎のエフェクトが展開し、その中心でシンが叫ぶ。
「――――《ファイアブレス》!」
怒りを伴った叫びと同時、ヘビガエルに向かって口から炎の吐息が発射される。
シンの口から放たれた炎の矢はヘビガエルの身体の中心を穿ち、HPバーを二割程度奪い取る。
「ゲアッ!?」
全身を炎に焼かれるような苦しみを味わい、ヘビガエルはのたうち回る。
「…………」
その様子を見、シキは内心で苦笑した。
シキも一度、訓練代わりのデュエルであれを食らったことがあったため、その苦しみは大いに共感できる。一点にしか食らっていないのにその痛みは全身を駆け巡り、ガスコンロ程度とは比にならない熱と火傷を膨らませたような痛みが襲う感覚は、常人ならとても耐えられない。
……まぁ、アティは簡単に耐えて見せたのだが。
「トドメだ。悪く思うなよ、俺達は人間だ。殺されることに恐怖し、偽りの命を与えられたお前達を何の恐怖を持たず殺す、罪深く傲慢な人間様だ。せめてお前が、また俺達の前に現れないことを願う」
静かな声で言って、シキはヘビガエルの額の中央にある『点』に、ダガーをとすっ、と突き刺した。
足先から消えていくヘビガエルを見下ろしながら、無言で隣に来ていたシンに言う。
「アティの胸……デカかったな……」
「…………ああ……」
シンも空を見上げ、ただ悲しそうに呟いた。
「もう少し、あともう少しだけでも躊躇していれば、良かったのか……?」
「いや、お前は、お前のした選択は正しかったよ。大切な仲間を失わずにすんだ。けど……! でも、でもあと少しだけ、見ていたかった……!」
「………ああ、俺も、そう思うよ……」
シキとシンの声は、どこまでも悲しげだった。
○●◎
そして、件の教会に着いた時には、もう日が沈みかけていた。
教会に到着するまでに様々なことがあったのだが、いちいち記録していてはキリがないので割愛させて頂く。
時刻は、17:00を回っていた。
「さっさと受けて、んでクリアするのは明日にしよう。夜は色々と物騒だからな」
シキの言葉にギルドメンバーの三名は頷く。
「しかし……」
そこでシキはギルドメンバー達に向いていた目を教会へと向ける。
そこはとても普通の教会とは言い難い雰囲気を放っていた。
レンガで作られた壁にはツタが這い、鐘楼は中途で折れ、入り口付近に建っている像はボロボロに破壊されていた。
それはどう見ても――
「どう見ても……吸血鬼の居城だよなぁ……」
声には出さないものの同意の雰囲気が後ろから流れてくる。
「ま、いいか。じゃ、入るか」
シキがドアノブに手をかけて、そこで気付いた。
ドアの片側が小さくだが開いていて、そして
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