第伍話 《真っ黒》〜前編〜
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個人的には、お前に会いたくないんだがな。
「そりゃあそうだろ。俺みたいな人でなしにはそんな評価で充分だ」
お前、もう少し色んなこと教えてくれないのか? 例えば、お前自身のこととか。
「嫌だね。それに、わかりきった答えなんざ聞いても面白くもなんともない。そうだろ?」
どういう意味だよ。
「それが解らない時点でお前は充分過ぎるくらい馬鹿野郎だ」
俺はお前の声を聞くことはできても、お前の姿を見ることはできない。それじゃわかるはずないだろ。
「そうかねぇ……。それじゃ一つだけ、ヒントだ」
何について?
「勿論俺の正体についてだ。……そうだな。俺は嘘つきだ」
………………それだけ?
「それだけ」
○●◎
そして、シキは第六層の仮住居の二階で目を覚ました。
「…………で、今日もいい所で目が覚める」
「シキー。朝飯食いに行こうぜ」
舌打ちしたくなるが、階下から届いたシンの快活な声に心を入れ替える。
あいよー、と間延びした声で言い、大きく背を伸ばした。
そして、今日も一日が始まる。
○●◎
シキの心情は、一日一日を楽しく過ごすというものであり、決して今の生活は楽しいとは言い難いものの、悪くはない。
彼の本心としては誰も傷ついて、死んでほしくない。皆に戦ってほしくないと思っている。
それは皆を思うが故なのだが、それを聞くような者が彼のギルド《傷物の剣》のメンバーにはいない。むしろ言った場合拳で返されるような我の強い者ばかりだ。
だが、それはそれで助かっている。
それぞれに気を使う必要が無い、そこが少数精鋭のギルドの利点だろうか。
寡黙ながら意外と頑固なシン。達観しているようで、すぐに熱くなるチルノ。おっとりしているようで戦闘中はおかしな性格に変わり、しかも戦闘が終わった直後に凹んでいるという奇妙な性格のアティ。そして、『殺意』の起源を持ち、内心で人を殺したいと思ってしまっているギルドリーダーのシキ。
ギルドメンバー計四人を並べただけで、この濃ゆさである。
現在、《傷物の剣》のギルドメンバーは第六層で評判のNPCレストランへと談笑しながら歩いていた。
「で、あのカエルが何だって?」
「そうなのよ! あのカエルったら剣を使うだけじゃなく、何かネバネバした液吐いてくるのよ!」
歩きながらチルノが子供のように騒いだ。
チルノが言っているのは、第六層全域に現れる《フロッグソードマン》という亜人系のMobである。
このMobは片手剣用のソードスキルに加え、食らえば約四割の確率で攻撃力降下という嫌なバステを持つ粘つく液を吐き出す。軽快なフットワークと厄介な片手剣剣技から男性プレイヤーのみならず、皮膚は柔らかくヌメヌメしていて、しかも人型の身体の頭部にはカエルの頭が乗っている為、その容姿か
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