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番外編
青騎士伝説 後編
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 「ッッ!!!」
 「そんなものがあたると思っているのですか?」

 もう何度目かと振ったファーの両手槍は、ほんの紙一重のところで空を切った。

 と同時に再び飛んできた二筋の光を、ぎりぎりのところで籠手で防御する。正確無比なナイフの狙いは、常に自分の鎧の隙間。鎧の下の黒シャツと鍛え上げた膨大なHP量、《戦闘時自動回復》スキルでなんとか耐えるが、その量は着実に減らされている。

 「……」
 「まさに「為す術なし」ですね」

 ファーは、かつてないほどに追い詰められていた。
 相手は、それほどに周到に準備し、『青騎士』の全てを封じにかかっていた。

 たとえば両手用の木柄長槍、《ミスティルティン》。その『青騎士』の生命線となる武器の特殊効果は、「敵に与えたダメージの5分の1を自分のHPとして吸収、回復する」という驚異的な効果。だからこそ『青騎士』は一切回復アイテムを用いずに長期間の戦闘が可能だった。

 しかし今は一対一、そしてその一人は徹底的に回避に専念している。これでは『青騎士』は少し頑丈でDPSの低いだけの壁戦士に過ぎない。

 「……」

 それだけではない。

 ここに来るまでに仕掛けられた数々のトラップ。何度も足を挟んだトラバサミが移動ペナルティを与え、鎧の隙間に突き刺さった鉄矢の重量は装備可能重量を圧迫しているせいで武器を振るう腕もいつもより重い。そのせいで、攻撃はますます当たらない。

 そもそもこの『結界の丘』という場所は、「あらゆる結晶が使用不可になる」という、回復を大前提とする壁戦士には厳しい場所だ。クリスタルなしでは回復も、そして緊急時の転移脱出すらも不可能になってしまう。

 まさに、絶体絶命の、窮地。
 しかし。それなのに。

 「……」
 「ふむ……降参、はしないようですね」

 ファーの思考に、焦りはなかった。
 頭の隅で鳴り響く警鐘は、まったく脳に届かなかった。

 「……」
 「やれやれ……」

 雨の中に消えようとする黒い影に向き直り、再び歩き出す。これ以上離れては自分の《索敵》スキルでは相手を捕捉できなくなる。一端離れればこの雨、相手もむやみに《投剣》は使えないだろうが、そうやって仕切り直す気などは、ない。ましてやその間隙を使っての回復など、考えすらしない。

 「―――ッ!!!」
 「おっと!」

 再びの突進系ソードスキルは、またしても紙一重でかわされた。

 それでも、怯みはしない。諦めはしない。
 回復ができない? 逃げられない?

 ―――臨むところだ。

 自分はあの日から今日まで、この日のために生きてきた。
 この日に死ぬのなら、何の悔いもありはしない。

 強い思いが痛みを、苦しみを、恐怖を、焦りを何
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