番外編
青騎士伝説 後編
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激しく引っ張られたのだ。この『結界の丘』に来るまでに散々手こずらされた、トラバサミだ。決闘のためにこの場所にはないのだと考えていたが、どうやら勘違いだったらしい。
「……」
ファーは無感情にそれを確認して、長槍を叩き付けるように振って罠を破壊にかかる。《ミスティルテイン》の体力吸収効果は「HP」にしか効果が無いために「耐久値」のトラバサミでは発動しないが、戦闘真っ最中に武器を変える訳にはいかない。
そんなファーに、雨の向こうから響く声。
「負けを認めたまえよ。粘っても君一人倒すのに十分な量の投げナイフが私のストレージにはあるよ? 我々は別に君を殺したいわけではないんだ。君の持つレアアイテムはその名前を変える《ペルソナ・オブ・クラウン》だけじゃないんだろう?」
罠を破壊した瞬間に声がした方に槍を振り回すが、また紙一重届かない。
振った槍の慣性でほんの僅かに体が揺れた瞬間に放たれた投げナイフが、鉄仮面の縦スリットに突き刺さる。運のいいことに左側だった為に、顔の右半分を覆う三日月形の仮面である《ペルソナ・オブ・クラウン》は破損せずに済んだ。
「……」
少なくないHPを削られて、さらには顔面にナイフが突き刺さったままという壮絶な状況になりながらも、しかし『青騎士』は確かな足取りで隠れた相手を探すために数歩踏み出していく。
そんな彼をどう思ってか、声はさらに続ける。
「私のこの名も、そうです。全くの同名は不可だったので、スペルは違いますが。「あの『PoH』の居るギルド」なんて、最凶ギルドに相応しいじゃありませんか。……しかしこの仮面は十月三十一日、ハロウィンの夜にだけこっそりと生じる年に一度のクエスト、『トリック・オア・デス』の獲得アイテム。あんな下層の辺境村であるにも関わらず凶悪な難易度の謎解きクエストでした。これを手に入れる『旋風』……アインクラッドで最もクエストに精通した男の残したアイテムは、それだけでは無いのでしょう?」
聞こえた声に再び槍を大きく振るう。
左眼が塞がって視界が更に狭まるため、頼るのは勘だけだ。
跳び退る敵の足音すらも掻き消す激しい雨に、通常は変化しにくい草原地帯の地面をぬかるみへと変えていく。これではソードスキルの扱いは難易度を増していくだろうが、条件は同じだ。大した問題では無い。
「……!」
次に繰り出された短剣は、狙いを外して地面へと突き刺さった。
反射的に好機とみて博打とも言える突進系ソードスキルを発動、飛んできた方向をあらん限りの力で貫く。だがそこには、雨しかなかった。投げられたナイフは、囮。硬直の隙に、背後からまた襟足の部位の僅かな隙間にナイフが突き立てられる。
衝撃に膝をついた青騎士。
その彼を見
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