番外編
青騎士伝説 後編
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しかし男はなおもがく。
逃れようと、握り締めたままだった三日月を振おうとその腕を伸ばし、
「……げーむ、おーばー」
飛来した発光を纏う刃に、その武器を弾き飛ばされた。
◆
戦闘が終わったとき、何の偶然があれほど激しかった豪雨がみるみる内に止んでいった。
『結界の丘』は結晶無効化空間の為、オレンジの輸送には手間がかかるが、その点はウッドロンが問題無くこなした。その「斧で逃げられないよう両足を斬り落として馬車で運ぶ」という発想と、それを躊躇なく実行する精神力に私はリズベットと再び顔を見合わせたが、今回ばかりはそれを咎める気も、そんな精神的余裕も無かった。
リズベットが、あの後プレイヤーを運ぶためにと手配をお願いしていた馬車を引いて現れた時、ファーはこれ以上ないほどにボロボロで、完全に気を失ってしまっていた。死んでいるのではと瞳を潤ませたが、私とウッドロンのVサインによってその心配は綺麗に拭い去れたようだった。ちなみに彼女の中でも五本の指に入る作品である《シアン・メイル》は砕かれて影も形も無くなっていたが、リズベットは「今回だけは許してあげる」と上機嫌だった。ファー、得したね。
そうそう、囚われていた三人の少女は、泣きじゃくった。
たいそう大仰に泣き叫んだ。
正直これが一番大変だった。リズベットが来てくれてからはなんとか落ち着いて貰えたものの、それまでの説得は口下手な自分では非常に困難で、かといって筋金入りの変態であるウッドロンに任せる訳にもいかず。はあ。ため息もつきたくなる。
ただ。
「本当に、本当に、ありがとうございました。『青騎士』さんは、命の恩人です。私も、……友達も。誰一人死なないですんだのは、本当に、『青騎士』さんのおかげです」
このセリフは、まるで自分が言われたみたいに誇らしかった。
そうして、主街区。
何故か担架を持っていたウッドロンに手伝ってもらって、あの後意識を失ってしまったファーを転移門で『冒険合奏団』のギルドホームへと連れて帰った。どのみちあの武装の損傷では、しばらく『青騎士』に復帰は出来ないだろう。ゆっくりと休んで貰えばいい。
私はファーの眠るベットの傍ら、ゆっくりとその目覚めを待ち続けた。
◆
「オイラ、……出来たッス。勝ったッス。……でも、ギルマスは、これでオイラのこと許してくれるんスかね。……あの日逃げた、オイラのことを。オイラ馬鹿だから、全然分かんないんスよ……」
こんな弱音を言ったのは、あの日泣き崩れて依頼だった。
自分の中にずっとずっと押し込んでいた感情を、レミに打ち明けた。
けれどその、意を決しての独白に対するレミの答えは、何処までもシンプルだった。
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