第四十五話 決戦(その四)
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ライトとリュッケが絶句している。まあそうだろうな、これほどの皮肉は有るまい。可笑しくて笑ってしまった。
……そうか、あの男を帝国宰相にする手も有るな。さぞかし性格の悪い、皇帝を皇帝とも思わぬとんでもない帝国宰相が誕生するだろう。いかんな、笑いが止まらない。フロイラインが、シュトライトが、リュッケが俺を呆れたように見ている。
「帝国はエル・ファシル公爵を尊重しその識見を帝国の統治に取り入れようというのだ。エル・ファシル公爵は帝国の統治に関与することになる。どうかな、それでもエル・ファシルの人間は反帝国を標榜出来るかな?」
「……」
彼らに自治を与えて孤立させるのではなく帝国貴族として遇する事で帝国の中に取り込む。あの男らしいやり方だ、皮肉でもあり辛辣でもある。この俺が新たな貴族を作り出す、しかも民主共和政を信奉する貴族を作り出すか……。
前代未聞の椿事だな、しかし間違いなく実利は有る、だから受け入れざるを得ない。この取り込みにより銀河帝国皇帝は専制君主で有りながら民主共和政の擁護者、庇護者にもなるのだ。その時帝国は真の意味で宇宙を統一する事になるだろう……。
帝国暦 490年 5月 3日 ガンダルヴァ星系 ブリュンヒルト コンラート・フォン・モーデル
反乱軍は後退した。総旗艦ブリュンヒルトの艦橋はようやく落ち着いた雰囲気を湛え始めた。さっきまでは皆疲れた様な顔をしてぐったりしていたけど立ち直ったみたいだ。僕が用意した飲み物をホッとした様な表情で飲んでいる。頭領とメルカッツ参謀長も無言で飲み物を口に運んでいる。大分疲れたみたいだ。
帝国軍は今補給部隊から物資を受け取っている。ウルヴァシーが近いから帝国軍は補給は楽だ。反乱軍はどうなのかな、補給部隊を連れてきているのか、それとも補給無しで戦っているのか。もし補給無しなら段々苦しくなるはずだ、戦いが長引けば長引くほど帝国軍が有利になる。後方主任参謀のクレッフェル少佐がそう言っていた。
それにしても凄い戦いだった。いきなり反乱軍の戦い方が変わったんだ。前線でもの凄い爆発が起きていた! あんなの初めて見たよ。艦隊は不意を突かれて右往左往した。艦橋も大騒ぎだった。皆顔面を引き攣らせて叫んでた。“何が起きた!”、“どうなっている!”って。情けない話だけど僕はそんな騒ぎに怯えていたと思う。
あんまり煩かったからだろう、頭領が皆を厳しい目で見た。この程度でオタオタしてどうする、そんな感じだった。それとも情けない奴、だったのかな。でもそれでようやく皆が静かになった。ちょっと恥ずかしかったな、皆もバツが悪そうだった。
でも状況は少しも良くなかった。この艦隊だけじゃない、帝国軍全体が不意を突かれていたんだ。頭領は全軍に後退するように命じたけどそ
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