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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十五話  決戦(その四)
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。俺も何故そんな事をと最初は思った。

「新たな領土を上手く治めるためだ、そして帝国のためでもある。自由惑星同盟という国家は消滅する。それは同盟が国家としての寿命を使い果たしたという事だ。しかし民主共和政という統治制度と思想は残す」
「……」
二人とも腑に落ちない表情だ。

「帝国は自由惑星同盟という国家は反乱軍として否定する。しかし民主共和政という統治制度は否定しない、エル・ファシルでの存続を許す。百年、二百年後、帝国の統治が破綻すれば或いは民主共和政が新たに銀河を治める事になるかもしれぬ」
「そ、それは」
二人が驚愕している。リュッケがごくりと喉を鳴らした。フロイラインも表情を消している。

「そう思う事で彼らが帝国の支配を納得するなら安いものだ。そして帝国の統治者達も気を抜けば彼らに取って代わられると思えば愚かな統治はするまい。敵無き国家は内から滅ぶ、それは統治制度も同じであろう。民主共和政は帝国が繁栄するために必要なのだ」
俺も最初に聞いた時は驚いた。しかし道理ではある。

「ですが、エル・ファシルに人が集結するということは無いでしょうか? エル・ファシルが巨大になり過ぎ、危険ではありませんか?」
「シュトライト、その心配は無い。エル・ファシルの自給能力はそれほど高くない。現状において人の流入はエル・ファシルにとって負担でしかない」
まだ不得要領と言ったところか……。

「食料、エネルギー、雇用、人が増えればそれの確保が要る。雇用はともかく食料とエネルギーはエル・ファシルのみで賄う事が出来なければ周辺星域から購入するしかない。人が増えれば増えるほど帝国と密接に繋がらなければエル・ファシル公爵領は生きていけないということになる……」
「なるほど」

ようやく分かったか、エル・ファシルの喉を締め上げる事など難しくないのだ。攻める必要など無い、物流を止めるだけ、いや値を吊り上げるだけで悲鳴を上げるだろう。それを臭わすだけで震え上がるに違いない。人が増えれば増えるほど彼らは帝国との共存を選ばざるを得ない……。

出来るだけ大勢の人間にエル・ファシルに行って貰いたいものだ。その分だけ俺の負担は減るし共存の必要性が強まるからな。しかしおそらくエル・ファシルは受け入れの制限を行うだろう。だがそれも悪くない、制限をかけるのは俺では無い、エル・ファシルだ。受け入れを拒否された人間が怨むのも俺では無くエル・ファシルということになる。つまり、エル・ファシルは反帝国の中核には成り得ないという事だ。

「帝国はエル・ファシル公爵を帝国第一位の貴族と認める。当然だが新年の年賀には貴族を代表して挨拶をしてもらおう。そして無任所の国務尚書として帝国の統治にも参加してもらう。まあTV電話での参加になるだろうが……」
「……」
シュト
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