崑崙の章
第1話 「えろげ?」
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とて防衛は出来ても他の街まで守れるような軍勢ではない。
「確かに江賊如きに金銭を払うのは屈辱の至り。しかし、我らが民を守るために苦渋の決断をしたのです! それをお考えください」
「…………すまん」
文官の必死の言葉に、謝罪の言葉しか出なくなる厳顔。
目の前で激変した武人の姿に、太守である文官は椅子からずり落ちそうになった身体をようやく起こした。
「……そういうわけです、厳顔殿。今、江賊と新たな火種を作るわけにはいかなくなったのです。重ねて申し訳ありませんが……お引き取りくだされ」
「くっ……」
「むろん、今回の出兵の費用は、御礼と御詫びも合わせて後日必ず……」
「そんなものはいらん! わしを見損なうな!」
「…………」
「……すまん。失礼する」
太守と文官の申し訳のないという視線に耐え切れず――
厳顔は、その場を後にした。
―― 盾二 side 白帝城 城下街 ――
「うまっ! てかなんであるのさ、麻婆!」
俺は適当に入った菜館の菜譜にあった、見知った名前に、思わず頼んだ。
この時代、まさかないだろうと思っていた料理の名前がそこにあったからだ。
その名は……麻婆豆腐!
「……トウガラシって南米原産だよなぁ」
確か世界に広がるのは、十五世紀以降のはず。
ああ……まあ、創られた世界だからもうなんでもアリかもしれない。
「そういや、鈴々に連れて行かれた屋台にラーメン……しかも鹹水っぽいの使っている麺があったな……まあ、いっかぁ、うまいし!」
下手な考え休むに似たり。
もうそれで全部説明付けときゃいいや。
だってうまいんだもの。
「うまい! おかわりください!」
「あいよぅ! 兄ちゃん、美味そうに食うねぇ。旅の人かい?」
店の店主らしきおっちゃんが、嬉しそうに尋ねてくる。
そこそこ混んでいる店なのに、一人で切り盛りしているようだ。
「ええ。ここから西に向かおうと思っています。親父さんはここで長いんですか?」
「ああ。親父の代からここで店構えてるよ。親父が隠居してからもう十年程かな……あいよ、麻婆、おまちっ!」
ごとっと置かれる大盛りの麻婆豆腐。
おお、なんか最初より増えてないか?
「美味そうに食べるから大盛りにしといたぜ」
ありがたい!
久しぶりに食べる美味い料理に、ご飯が進む進む。
そういや、米も玄米じゃなく白米……まあいっかぁ!
「親父さん、飯もおかわり! できればドンブリで!」
「はははははは! お前さん、気に入ったよ! よっしゃ、まってな!」
親父さんは、ラーメンが入るようなドンブリを取り出し
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