崑崙の章
第1話 「えろげ?」
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なあ。
しかも出来たとしても大量精製は難しいだろうし、なにより焼却すると毒素もある。
(迂闊には広められない……か。こうなると未来の知識も迂闊に出せないな)
なにしろ全ての物事には、それを生み出す工程で利益と不利益が同居する。
それはどんな創造物でも同じだ。
例えば火薬。
この時代にはないものの代表格だが、最も簡単な黒色火薬を作るためには大量の硝石、硫黄、木炭がいる。
一見便利なようだが、実はものすごく取り扱いが困難だ。
なにより爆発させた場合、その威力の割に黒煙が非常に多く、使う側の中毒症状を招きかねない。
よく日本の種子島……火縄銃などが例に挙げられるが、あれを使用されていた頃、ヨーロッパを含めて黒煙による呼吸器障害と、使用者の顔への炸薬の被害も相当大きかったという資料を見たことがある。
まあ、それでも胴丸を貫通する威力もあり、弓矢に比べれば格段の威力があるのは疑いようもないことだが……
また、無色火薬と違い、黒色火薬は水に非常に弱い。
粉末状の黒色火薬は吸水性が非常に高く、水を少しでも含むと爆発しなくなる。
雨が降れば一発で使えなくなる。
雨でなくとも水でも掛けられれば、鉄砲はただの棒でしかない。
戦国時代の頃、日本では雨が降るたびに油紙を巻いて徹底的に水に濡れない様にしていたらしい。
水に潜るときなど分解して、部品ごとに油紙に巻いたほどだったらしい。
現代の無色火薬と薬莢が開発されるまで、水と鉄砲はそれほど相性が悪かったのだ。
(そう考えるとカノンとか、船に付けていた大砲も大変だっただろうな……すぐさびそうだし)
日夜油をつけた布で、丹念に潮風を拭う毎日だったのだろう。
そんな益体もないことを考えつつ、地図を広げる。
かなり細かく記載された地図。
本来はこんな詳しい地図は、洛陽の書庫にでもいかないとないだろう。
そこは霞に出来るだけ詳細な地図を頼み、それを元に朱里と雛里によって補填されたものだった。
とはいえ、それも益州周辺までしかない。
(目指す先はその先にある……)
地図を確認して方向を定める。
進む先は、まだまだ先だ。
「とりあえずは長江に沿っていくしかないな」
俺は立ち上がって地図をまとめると、麻袋に突っ込んで肩に掛ける。
「その前に……街でちゃんとした飯を喰うか」
クッキーじゃ、小腹しか膨れないしな。
そんなことを考えながら、馬の手綱を取ってその背に乗る。
白帝城までは、あと一刻(二時間)の道のりだった。
―― other side 白帝城 ――
「どういうことか!」
ドンッと机を叩く音がする。
思
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