崑崙の章
第1話 「えろげ?」
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見ているのね。
「ぷっ……クスクス」
私はいつの間にか笑っていました。
自然に出た笑いでしたけど……ちょっとわざと笑いました。
少しだけ……涙が出るのを誤魔化しながら。
そして――盾二様は旅立っていきました。
笑顔のままで。
―― 盾二 side 白帝城近郊 ――
宛を出てから、既に十五日。
馬に乗りつつ、指南魚という方位磁石を使って旅をして。
ようやく長江まで辿り着いた。
長江の畔まで行き、馬に水を飲ませて近くの木に手綱を繋いでおく。
しかし、この時代に方位磁石があったとは驚きだ。
てっきり創られた世界だからか? と思ったのだが、聞いてみると百数十年前にこの指南魚というのが作られたとの事。
そういえば後漢の時代は占いが神聖化されるほどだったというし、占いにおいて方位は重要な役割を持っていたはずだ。
意外と古くからあったのだな、としきりに納得しつつも、長江の川縁で腰を下ろす。
さすがは長江。
川というより、どこかの海の入り江か湖かと思えるほど広い。
俺はその自然の景色を堪能しつつ、携帯食であるクッキーを取り出す。
意外に思うだろうが、このクッキー、実はどんぐりからできている。
どんぐりのクッキーは、日本や中国の縄文時代からあった。
まあ、出来栄えは現代のクッキーなんかとは比べ物にならないぐらいにまずい。
何しろ砂糖を入れないのだ。
食べられる、という程度のものでしかない。
だが、現代のクッキーで味覚が酷く贅沢になっている俺が、そんなもので満足できるわけがない。
もちろん知識を総動員して作りましたよ、現代版クッキー!
まあ、小麦で作るとあんまり日持ちしなくなるわ、しけって美味しくなくなるわで携帯食とはいえなくなるんだがな。
だからどんぐりのクッキーに砂糖をまぶして、さらに火で炙ってみました。
固く縛った小袋から一つだけ出して、パクっと一口食べる。
結構美味しいが……やはり小麦粉で作るものには及ばない。
しかも砂糖を使うから、気をつけないと蟻やら虫やらがすぐに沸いて来る。
保存器具なんてもちろん、軽くて丈夫なプラスチックなんてないからどうしようもない。
(そのうちどっかでポーキサイトでも掘るか……いや、それはアルミか。プラスチック……あ、石油か。精製なんてどうやったっけ)
原油の精製は蒸留装置が必要だ。
おまけに大量の精製には、場所も設備もいる。
(作ってはみたいが……さすがに時間かかるだろうな。知識もないし)
蒸留ぐらいはできても、それをプラスチックにするための工程がうろ覚えだ。
天然樹脂の製法ぐらいは知っているが……合成樹脂は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ