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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の3:二つの戦い
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・・・」
「だが今日を生き延びるのだ。四の五の言っていられる暇はない。・・・戦える者はあれで全員か?」「兵員としては全員だ」「本当か?」
「・・・老人や、子供も含めれば後100はいけるかもしれん」「ならば集めろ。弓を取らせるのだ」「・・・くそ」

 いよいよ状況は悪化していっている。傍で会話に耳を傾けていたユミルは心中そう呟き、腕に嵌めたガントレットの冷たくなだらかな肌を触る。これが後数十分ほど経てば血に濡れる事になるのだろうと考えながら彼は正面を見据える。彼が立っている所からそう遠くない場所に、盗賊等が意気揚々とばかりに構えていた。森の様子が窺えないために攻撃を控えているだけで、いざとなればすぐに襲来するのがその刺々しい空気から伝わってくる。
 ユミルの傍にパウリナが歩いてきた。まだ不快げな色が顔に残っていたが、気丈にも確りとした足取りであった。

「気分は大丈夫か?」「はい、もう走れます」「そうか。戦場では何が起こるか分からん。自分の事は自分で何とかするんだぞ」
「御主人。この戦い、本当に大丈夫なんですか?」「・・・さぁな。痛み分けに終われば、それで上々といったところだろう。・・・今日は沢山、血が流れるぞ」
「・・・覚悟してます」

 ふと傍にいた兵士等が慄然とした様子で声を出したり、盗賊等に向けて指をさした。一頭の騎馬がこちらに近付いているようだ。人よりも良い視力でユミルは、馬に危うげに乗っかるものを捉えた。

「どうやら、クウィス領には救援要請が届かなかったらしい」「・・・みたい、ですね」

 パウリナも顔を青褪めさせながらそれを視認する。近付いてきた馬の上には、首の無い躯が乗っかっていた。その服装を見るにエルフの衛兵であると見受けられ、同時に、クウィス領に向けた救援要請が横合いより潰されたと理解できた。
 こちらの動揺を嗅ぎ取ったのか、盗賊等より勇ましい声が響き渡り、タイガの森にまで届いた。

『皆殺しだぁ!!』『おおおおっ!!!』

 乾いた空気と痩せた枝が僅かに震えた。今まで聞いた事の無い類の声なのだろう、その力強さと野蛮さに兵士等が恐怖の色を顔に現す。
 盗賊等の陣が陽炎のように揺らめき、俄かに重厚な足音が聞こえた。遂に盗賊達が行軍を始めたのだ。エルフの隊長らが急ぎ寄せ集めの弓兵等を前に並べ立てようとする。イル=フードが馬上より改めて指揮を出した。

「弓兵を前に。射掛けよ」「はっ。弓兵、前へっ!!」

 もうやっているとばかりに弓兵等は矢を弦に番えた。エルフの弓は少し湾曲しているのが特徴であり、王国軍が正式採用している弓よりも飛距離が伸びるため、強肩の持ち主なら300メートルは優に飛ぶであろう。

「構えぇっ!放てっ!!」

 矢が引かれた。音のけたたましさと共に、のべ100ほどの矢
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