拠点フェイズ 2
劉備・孔明・鳳統・馬正
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
か……なんつったらええんやろ?」
貫禄……ねぇ。
そんなこと、ない。
そんな歳でもないし、そんなしっかりした考えも持ったわけでもない。
ただ……そう。
ほんちょっと……ほんのちょっとだけ。
「(ぼそ)自分の気持ちに気付いただけだよ」
「は? なんや?」
「ううん。なんでもない」
私は頭を振って、日差しの入ってくる窓を見る。
雲ひとつない青空。
その青さが眩しくて。
思わず空を見て微笑む。
「今日もいい天気……だね」
―― 馬正 side ――
人を集め、盾二殿の部屋の竹簡を倉庫へと移送し、その整理が終わる頃には、日がとっぷりと暮れていた。
部屋に戻りつつ、私は溜息を吐く。
(今日の鍛錬は出来ず仕舞いだったが……致し方あるまい)
運び出した竹簡の量は膨大なものだった。
なにしろ盾二殿の部屋の約半分近くを占めていたのだ。
倉庫に運んだものの、その整理に関羽殿や張飛殿が目を回したほどだった。
あれを全てお一人で処理した我が主は、驚嘆に値する。
(整理した竹簡の内容は、ほぼ漢の南の事ばかりだった……それほど重要だということか)
あの日。
我が主に今後の方針と、その計画を明かされた時。
思わず私は、驚愕のあまり腰が砕けそうになった。
信じられるだろうか。
無位無官の何の後ろ盾もなく、義勇軍を率いていただけの男。
それが、あれだけの壮大で綿密な計画を、たった一人で立てていたなどと。
私だけではない。
孔明殿も鳳統殿も驚き、ずっと必死に考え込んだ後。
『貴方を選んだ私達は、間違いではありませんでした。本当に……』
そう言い切ったのだ。
(私は主と出会えたことを……天に感謝する)
荒唐無稽な話と、人は言うのかもしれない。
だが……私は主を信じる。
主の武を信じる。
主の智を信じる。
主の……覇気を信じる。
(我が命は主のために……)
私が顔をあげると、中庭から月の光が燦々と差し込んでいるのが見える。
そこには――
(……? 孔明殿に鳳統、殿?)
二人が中庭で、互いに並んで空を見上げていた。
思わず柱の壁に隠れる。
(……なんで隠れたのだ、私は?)
自分の行動によくわからない疑念を抱きつつ、そっと柱の影から二人を見る。
二人は、相変わらず空を見上げていた。
今宵は満月。
月明かりが燦々と照り注ぎ、灯りがなくとも昼のように視界が開けている。
その月明かりに照らされた二人の幼女が、静かに月を見上げている姿は幻想的ですらあった。
「……もうすぐだね」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ