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駄目親父としっかり娘の珍道中
第5話 地図やガイドブックを持ってても迷う時は迷う
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気の色で彩られており鋭い牙と眼光を放っていた。
 そして、大きな口からは絶え間なく唾液が滴り落ちており、それから察するにこの怪物は空腹を満たすべく獲物を探している状態であったようだ。
 正しく、今のなのははこの怪物にとってまたとない獲物であったのだろう。

「えっと……もしかして、私ってそんなに美味しそうに見える?」

 明らかにその様だった。怪物はなのはを舐め回すかの様に全身を見回しながら徐々に距離を詰めていく。
 一歩一歩、少しずつ、怪物はなのはとの距離を詰めてきていた。それに呼応するかの様になのはも一歩ずつ距離を離す。
 互いに一進一退しあっていた。
 即座に踵を返して逃げたかったが、相手は四足歩行の怪物。恐らく人間の歩行では一瞬の内に追いつかれてしまう。更に化け物に対して背中を向けている形だ。背中越しにマウントを取られては起き上がる事はまず不可能だ。

「あっ!」

 怪物ばかりに気を取られていたせいだろう。足元がお留守になってしまっていた。本来ならなんてことのない草むらに足を取られてしまいその場に尻餅をついてしまった。
 下半身に痛みを感じ、思わず涙目になりながらもなのはは目の前に迫る怪物を見た。
 既に怪物は目の前に来ていた。
 もうなのはとの距離は目と鼻の先である。怪物の荒い鼻息が近くで聞こえて来る。
 もう身動きが出来なかった。倒れてしまった状態では素早く逃げる事など出来ない。まして、こうも間近にまで迫った状態では逃げる事はまず出来ない。
 このまま成す術もなくこの怪物の空腹を満たす餌となってしまうのだろうか?
 そう思い諦め掛けたその時であった。

【何故、お前は起動しないのだ?】

 声がした。
 しかし、それはなのはの耳に聞こえて来る声じゃない。頭に直接聞こえて来る声であった。

「何? 一体何なの?!」
【何故、貴様は起動しないのだ? 既に寄生は完了している筈。なのに何故起動しないのだ?】

 恐らく声を発しているのは目の前に居る怪物だ。この怪物が何かしらの方法を用いてなのはの脳内に声を送っているのだ。
 だが、それでも意味が分からない。
 【起動】【寄生】さっぱり意味が分からなかった。

「い、言ってる事が分からないよ! 一体何が言いたいの? 起動って何? 寄生って何?」
【おかしい。寄生しているにも関わらず起動しないとは。もしやバグか? 面倒だが仕方あるまい】

 言葉を終えると、怪物は突如なのはから距離を離す。後方に跳躍し、数メートル位まで離れた後、怪物の背中から幾本もの長い触手が姿を現した。
 数本の触手は唸りを上げると一目散になのはへと向ってきた。
 逃れようとするがそれよりも素早く怪物の放った触手はなのはの手足を絡め取り、そのまま上空へと持ち上げて
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