第八章 望郷の小夜曲
第七話 捜索隊
[1/16]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
荒れるかと予想された諸国会議は、予想に反して特に波風が立つことなく静かに終わった。
アルビオンの広大な領土はトリステインとゲルマニアがその版図に加え、僅かに残った土地は、ガリアを含めた三国で共同統治し、しかる後、王権を復活させることになった。その土地は首都ロンディウムを含む一帯であり、その初代代王として、トリステインの老貴族であるマルシヤック公爵が選ばれた。戦争により荒れたアルビオンを復興させるため、内政の手腕に優れているマルシヤック公爵が、代王に就任することを反対するものはいなかった。もちろん、監視や利益を得るため、ゲルマニアとガリアからも、それぞれ副王が選ばれ補佐として置かれることになった。
そして諸国会議の最後には、ハルケギニアの王権を守り、共和制の台頭を封じる目的のための同盟、『王権同盟』が発表された。
これはこの同盟に参加した国において、何らかの反乱などが起きた際、その他の国の軍事介入を要請することが出来る同盟であり、これにより不用意に反乱を起こさせないようにしたのだ。
同盟の締結が終わると共に、諸国会議は無事終了。それぞれの国の代表たちが、明日から自国に帰るための用意をしているだろう晩のこと、ハヴィランド宮殿に用意されたとある一室に渋い顔をした老人と、顔を俯かせたまま黙り込んだ少女の姿があった。
椅子に深く座り込み、頭を垂らしている少女の名はアンリエッタ。トリステイン王国の女王である少女であった。アンリエッタは背後に立つ老人―――枢機卿であるマザリーニが渋い顔をして立っていることに気付いていないようである。
「陛下、此度の会議お疲れ様でございました。会議の結果は十分なものであり、今回の戦争での損害を補って余りある利益を得ることが出来ました。明日の早朝にはここを出る予定ですので、そろそろ御休みになられては」
「…………」
「陛下」
「…………」
ピクリとも動かず黙り込んだままのアンリエッタに、マザリーニは小さく頭を振ると深く溜め息を吐く。
「はぁ……何があったか聞きはしませんが、もう少ししっかりしてくださいませ。そんな様子では、あのガリアが何かしてきた時何も出来ませんぞ。ふむ、しかしガリアは一体何を企んでいることやら。この戦争を実際に終わらせた国だというのに、港を一つ貰っただけで、後は口を出してこないとは……本当に何を考えているか分かりませんな」
返事を返さないアンリエッタの背に向けて、マザリーニは苦い顔をしながら警告を続ける。トリステインやゲルマニアが直轄領として広大な土地を手に入れたにもかかわらず、全くと言っていいほど領土を手に入れようとする意思を感じられなかったガリアの様子に、マザリーニは危険を感じていた。無欲だからではないと、マザリーニは自身の経験から感じていた。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ