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八条学園怪異譚
第三十二話 図書館その十
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 ろく子だった、ろく子は図書館の門の前にいつものスーツとズボンの姿で姿勢正しく立っている、そのうえで二人に言って来たのだ。
「お待ちしていました」
「っていうと青木先輩から連絡がですか」
「あの人からですか」
「はい、青木さんとはあの人が物心つく前からのお付き合いでして」
 それでだというのだ。
「時々一緒に飲んだりもしています」
「というと先輩ろく子さんにもですか」
「セクハラをですね」
「スキンシップに積極的な方ですね」
 肯定的に受けている人間の言葉だった、話すその顔もにこりとしている。
「非常に」
「いや、先輩らしいっていいますか」
「どなたにもそうされるんですね」
 二人はろく子からその話を聞いて目が逆蒲鉾型になるのを自分達でそれぞれ感じた、そのうえで言うのだった。
「本当に同性好きですよね」
「男の人は旦那様だけっていうのに」
「貞節には厳しい方ですよ」
 逆に言えば貞節以外には、というのだ。
「それもかなり」
「まあそうですけれど」
「そこはいいんですけれど」
 だがそれは逆に言えばだ。
「貞節に触れないと」
「本当に無茶しますよね」
「モラルは守るべきもの、しかしモラルでないのなら」
 それならばというのだ、モラルは守るがモラルにないのならば。
「構わないのです。法律も書かれていないことを守る必要はないですね」
「まあそうですよね」
「法律を守れば」
「しかもあの人はちゃんと人道も弁えておられるので」
 それでだというのだ。
「ぎりぎりのところは安心されていいです」
「ううん、何かお部屋に連れて行かれかけましたけれど」
「本当に大丈夫なんですか?」
「はい、最後の最後で無理強いはされませんし」
 それもないというのだ。
「ですからあの人は大丈夫ですよ」
「とりあえず迷惑な人ですけれど悪い人じゃないですね」
「それはわかります」
「はい、確かにかなりの酒豪ですが」
 うわばみに匹敵するまでのだ。
「巫女としても相応しい方です。それでは」
「はい、それではですね」
「今からですね」
「図書館の中に入って」
 そしてだというのだ。
「泉かどうかを確かめて下さい」
「はい、わかりました」
「今から」
 二人はろく子の言葉に頷きそうしてそのろく子と一緒に図書館の中に入った、鍵はろく子が持っていて彼女が開けた。
「あっ、鍵もですか」
「持っておられるんですか」
「実はここに住んでいまして」
「あっ、ここがろく子さんのお家なんですか」
「そうだったんですか」
「そうなんです、この学園に来てからずっと住んでいます」
 この図書館にだというのだ。
「居心地がいいですよ」
「図書館って居心地がいいんですね」
「住みやすいんですね」
「本も一杯
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