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SAO−銀ノ月−
第五十三話
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 ヒースクリフと《神聖剣》を象徴する、十字が描かれている大盾はもはやその手にはなく、片腕ごと地面へと置かれてそのままピクリとも動きはしない。
このアインクラッドで破れるもの無しとまで言われた『絶対防御』は、その大盾持った腕を切り落として使えなくする、という手段で破られたのだった。

 そこまでするのに俺も無傷という訳にはいかず、片腕は十字剣によってボロボロにされてしまっており、日本刀をしっかりと持つどころかクナイを投げることも出来はしない。
かくいう俺は日本刀を片手で持つことも多いが、日本刀とは元来両手で持つべき武器だ……副兵装のクナイが使えないこともあいまって、これは大きなハンデとなる。

「……まさか、こうやって突破されるとは思わなかったよ」

 ヒースクリフは片腕になった自分の腕を見ると、感心するかのようなことを言っていながら、同時に肩をすくめた。
この期に及んで、今殺し合いをしている者と世間話に興ずることが出来るとは、流石の胆力だったが。

「無駄話をしている余裕はないんじゃないか?」

 これ以上ヒースクリフとの会話を俺はする気はなく、また、これ以上会話をしてしまうと俺の疲労がヒースクリフへと伝わってしまうようで怖かった。

 第七十五層ボスモンスター、スカルリーパーとの戦いとの二連戦ということで俺は少なからず疲労はしている。
それはヒースクリフも同じことだが、ヒースクリフのメインは防御で俺は斬り払いと回避……どちらがより疲弊するかは明白だ。

「ふむ、それもそうだな……ならば、行かせてもらうとしよう」

 ヒースクリフのセリフと共に俺は背後に避け、回避とともに十字剣の横薙が俺の眼前を通り過ぎた。
背後へ避けてなければどうなっていたかは想像に難くないが、そんなことは考えずにお返しの日本刀《銀ノ月》が、ヒースクリフの胴を切り裂かんと肉薄する。

 しかし、カスリしかしなかった為に大きく威力を減じられ、ヒースクリフの真紅の鎧にはその一撃は通用しない。
ついつい伝説を打ち立てた今は無き大盾に目がいってしまうが、あの真紅の鎧とて最高級の逸品であることは間違いなく、その防御力は日本刀《銀ノ月》でも切り裂けはしないだろう。

「……ぬっ」

「……くっ!」

 どちらも自分の攻撃が避けられたのを感じとると、まずは敵の武器を封じようとお互いの剣に自らの剣を打ち合わせた。
まるで示し合わせたかのような剣戟は、儀礼用の剣舞のように見えたことだろう。

 そしてそのまま俗に言う、鍔迫り合いという状態になってしまう……どちらも鍔で受け止めている訳ではなく、刃と刃で受け止めているが。
キリキリと常人にはとても耳障りな音を響かせながら、俺とヒースクリフが愛剣同士を使って押し合いをしていき、徐々に徐々に俺が不
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