第五十三話
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利になっていく。
それもその筈だ、片腕で大盾を振り回すような馬鹿げた筋力値を持ったプレイヤーに、俺程度が鍔迫り合いで勝てる道理はない。
「……受け流すっ!」
当然ヒースクリフに鍔迫り合いで勝てないのは百も承知だが、受け流す程度であれば何とか俺には出来る。
鍔迫り合いをしていた際に俺が突如として力を抜いた為、ヒースクリフは前方へとよろけてしまい、その十字剣も一瞬使用不能となる。
「そこだっ!」
その隙をついた日本刀《銀ノ月》による最速の一撃が、先程のかすっただけと違って、ヒースクリフの真紅の鎧にクリーンヒットした。
その鋭い一撃は、ヒースクリフの胸の鎧に対して一文字で振るわれ、真紅の鎧に軌道と同じように一文字の傷が刻まれた。
「……フッ」
だがその攻撃を受けたにもかかわらず、ヒースクリフは薄く笑っていた。
そして次の瞬間理解する――俺は鎧に傷を付けただけで、ヒースクリフ自体にはダメージは入っておらず、俺はその無意味に終わった斬撃のせいで大きな隙を晒しているんだと。
――まずいっ……!
当たれば胴から下とサヨナラしなければならなくなる、ヒースクリフのカウンターが放たれ、俺の身体全体に『避けろ』という命令が電撃のように伝わった。
しかしどう避ける? 日本刀《銀ノ月》はヒースクリフへの一撃に使った為に使えず、足刀《半月》はタイミングが間に合わず、また片腕を使おうものなら確実に切り裂かれる。
「……《縮地》ッ!」
そうして俺が選択したのは、高速移動術《縮地》を使用して――これで残りの使用回数は二回となった――ヒースクリフの背後に回り込むこと。
「――やはりか」
そこで俺は驚愕する。
俺はヒースクリフの背後を取った筈なのに、《縮地》による高速移動が終わった後に見たのは、俺がいた場所に振り下ろされている筈の……ヒースクリフの十字剣だったからだ。
「君は次にそうするだろう……いや、そうするしかないだろうからね」
まんまとヒースクリフに誘導されていた自分に歯噛みし、片腕であるというのに自由自在に操られている十字剣に、俺は足刀《半月》による回し蹴りを叩き込む。
出来る限りの勢いを込めたつもりの回し蹴りだったが、ヒースクリフの筋力値に適うことはなく、俺はヒースクリフの腕の振りに吹き飛ばされてしまう。
「つぁッ……!」
しかし足刀《半月》のおかげで大したダメージも無く、何とか両手と片腕で着地に成功する。
お互いにスカルリーパー戦のHPを引き継いでいるので、俺もヒースクリフもHPに余裕はないが、結晶やポーションを飲んでいる余裕はない。
まだクリーンヒットはもらっていないが、少しずつダメージを貰っている身としては、もはやHPに余裕はない
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