第四十四話 決戦(その三)
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は同等なのだ、一つ間違うと第十四、第十五、第十六艦隊は包囲されかねない。とんでもない損害を被るだろう。
『で、どうするかね』
「このまま、前進を続けようと思います」
『ふむ、損害が増えるが』
「ですがここで退いても何にもなりません。せっかくここまで踏み込んだのです、なんとか突破する事を考えたいと思います」
私の言葉にビュコック司令長官が顎に手をやり少しの間考えた。
『……分かった、貴官の判断を尊重しよう。しかし危険だと思ったら直ぐに撤退してくれ』
「分かりました」
通信が切れる。皆が私を見ていた。
「聞いての通りだ、このまま突破を図る、最大戦速だ!」
皆が頷いた、私を信頼しているのが分かる。ムライ参謀長が突入を命じオペレータが艦隊に指示を出し始めた。しかし本当に突破できるだろうか……。不意を突いたはずだった、優位に立った筈だった。だが予想外に帝国軍の反応が早い。そして的確に対処してくる……。
ローエングラム公は艦隊を後退させている、縦深陣はほぼ完成していた。第十三艦隊がローエングラム公を追って速度を上げた。こちらが前に出るにつれローエングラム公の反撃が激しくなった。こちらが追い向こうが逃げる、もう少しで追いつく。……何かがおかしい、戦術コンピュータのモニターを見た。馬鹿な! 紡錘陣形の先端が突出している!
「グエン・バン・ヒューに命令! 速度を落し、本隊を待て!」
私の命令にオペレータ達が驚いたような表情をしたが直ぐに指示を出し始めた。何故だ、何故先鋒が突出している? そうか、そういう事か……。
「閣下?」
「……ローエングラム公にしてやられた……」
ムライ参謀長を始め皆が私を見た、愕然としている。
「ローエングラム公は故意に砲撃する箇所に濃淡をつけたんだ。紡錘陣形の最先端の部分を淡く、その後ろの部分を濃く……。戦術コンピュータがそれを示している」
モニターに映る紡錘陣は瓢箪のような形になっている。これでは先鋒のグエン・バン・ヒューは孤立してしまう、帝国軍にとって各個撃破の対象でしかない。間に合うだろうか、グエンが速度を落してくれれば本隊と連携できるのだが……。
「こ、これは、最前線で味方が帝国軍の攻撃を受けています!」
オペレータの悲鳴のような報告が届いた、遅かったか……。いやグエンは私の命令を聞かなかったのか……。戦術コンピュータは突出した先鋒部隊が帝国の攻撃で粉砕されていく所を映している。
「戦艦マウリア、破壊されました! グエン・バン・ヒュー提督、戦死!」
オペレータの報告に艦橋が凍りついた。先鋒部隊が指揮官を失い半壊している。してやられた、突破は出来なくなった。半壊した先鋒部隊をどうするか……、見捨てるか、それとも救出するか。どちらを選んでも損害は出るだろう、難しい判
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