第四十四話 決戦(その三)
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が負けたわけじゃない。これからだ。
戦術コンピュータのモニターが状況を映し出している。俺の艦隊がゆっくりと陣形を変えていく、もどかしいほどの速度だ。そしてヤン艦隊が陣形を変えつつ前進してくる。その先頭に攻撃が集中した。先頭が歪に凹む、しかし崩れない、再度陣形を整えつつ前進してくる。流石はヤン艦隊と言うべきだろう、同盟軍随一の精鋭だ、士気が高い! しかし僅かだが艦隊の前進が遅くなったし時間も稼げた……。
縦深陣は何とか間に合うだろう、問題はその先だ。ヤン・ウェンリーは兵を退くか、それとも突っ込んでくるか……。兵を退くなら問題は無い、しかし変化を求めて損害を覚悟で突っ込んでくる可能性も有る。出鼻を挫いて膠着状態を作り出す必要が有るな。……あれをやるか、丁度いい、勢い込んで来る奴には効果的だろう。
宇宙暦 799年 5月 2日 ガンダルヴァ星系 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー
「ローエングラム公は後退しつつ縦深陣を取りつつあります」
「そうだね」
「第一、第十四、第十五、第十六艦隊も動きが取れずにいるようですがどうなさいますか」
ムライ参謀長の言葉に皆が私を注目した。やれやれ期待されているのは分かるが何とも視線が痛い。思わず髪の毛を掻き回した。
「ビュコック司令長官と話がしたい、通信の準備を」
「はい」
グリーンヒル大尉がオペレータに指示を出すと中央のスクリーンにビュコック司令長官の顔が映った。互いに敬礼をする。
『不意は突いたが向こうも反応が早い。どうかな、突破出来そうかな、ヤン提督』
「何とも言えません」
私が答えると司令長官が大きく息を吐いた。思うようには行かない、そう思ったのだろう。
『カールセン達も動けずにいる。まさか二個艦隊でV字陣形を作ってくるとは……』
「……」
同感だ。まさかあんな事をするとは……。
今回の作戦の狙いは二つあった。一つはローエングラム公の艦隊を攻撃し中央突破を図る事。上手く行けばその途中で彼を斃す事が狙いだった。もう一つはモートン提督の第十四艦隊、ホーウッド提督の第十六艦隊がそれぞれルッツ、ワーレン艦隊に一点集中砲火を浴びせつつ中央突破を図る。
当然だが敵は後退しつつ縦深陣を取る可能性が高い。そこをカールセン提督率いる第十五艦隊が分断し突破すると言うものだった。突破できれば後背からローエングラム公を攻撃する事も出来る。そうなれば前後から挟撃できるのだ、必ず斃せるはずだった。
第十三艦隊の攻撃もどちらかと言えば陽動の色合いが濃い。ローエングラム公を慌てさせ注意を逸らす、そしてカールセン提督の動きに驚いて慌てた時にはこちらが押す。そう考えていたのだがまさか二個艦隊でV字陣形を作るとは……。あれではカールセン提督は突き進めない。兵力
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