第四十四話 決戦(その三)
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と俺を一対一で戦わせようというわけだ。一対一ならヤンはラインハルトにも勝てる、そう思っているのだろう。まあ俺もそう思わないでもない。しかし年寄りは碌でもない事を考えるな、ブリュンヒルトに乗っているのはラインハルトじゃない、俺だって教えてやりたいよ、全く……。
今のところ戦況は決して悪くない。押し寄せてくる敵を押し返す、防御戦としてはありふれた展開だ。これは俺の艦隊だけじゃない、他の艦隊も似たような状況だ。艦橋も落ち着いているし参謀達も不安そうな表情は見せていない。順調に戦況は動いていると言う事になる。このまま時間が過ぎ去ってくれれば良いんだが……、そんなわけないよな、溜息が出た。
有り得ないよな、どうもおかしい。時間制限を付けられているのは同盟側なのだ。戦線の膠着状態なんて同盟側にしてみればもっとも望ましくない事態だろう。それをもう丸一日半続けている。ビュコックとヤンがボンクラなら分かる。だがあの二人はそうじゃない、一体何を考えているのか……。今回も二時間ほど経つとヤンは艦隊を後退させた。
押し寄せては退き、退いては押し寄せる。これはヤンだけじゃない、他の艦隊も似たような動きをしている。しかも各艦隊がバラバラに行っている。同盟軍としての連携はまるで取れていない。一体どういう事だ? やはり俺の事はヤンに任せて終わりという事か?
いかんな、思考が堂々めぐりしている、建設的じゃない。水でも飲むか……。コンラートに視線を向けると緊張した様子を見せた。
「コンラート、冷たいお水を貰えますか」
「はい!」
いや、そんな嬉しそうな声を出されても困るんだけどな。
水を受け取って一口飲む。どうする? メルカッツに訊いてみるか? しかしな、参謀達は落ち着いている。彼らを不安にさせるのも考え物だが……。思い切ってメルカッツに問いかけた。
「参謀長、どうも敵の動きが不可解だと思うのですが……」
「小官も同じ思いです。いささか解せません。しかし他にはこれと言って不自然な動きは有りません……」
参謀達が顔を見合わせる中、メルカッツが戦術コンピュータのモニターを見ながら答えた。やはりそう思うか、つまり俺の杞憂じゃないってことだな。
「気を付けましょうか、油断はできない。……気付いた事が有ったら言ってください」
声をかけると参謀達が頷いた。まあ多少の気休めにはなるだろう……。
急激な戦況の変化は四時間後にやってきた。ヤン艦隊がまた押し寄せてきたのだ。しかし今度は俺の艦隊がとんでもない損害を出している。スクリーンで見ても酷い爆発だ。前線からも悲鳴のような報告が来ている、明らかにこれまでの攻撃とは損害の度合いが違う。
何が起きたかは想像がつく、ヤン艦隊お得意の一点集中砲火を受けたに違いない。艦橋の彼方此方で悲鳴が上がっている
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