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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
騎士の力を得た少年のお話・2
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私にはどうしようもなく心配に思えた。
普通の子供ならこんな状況で落ち着いていられることなどない。しかし、彼からは感情の起伏がほとんど感じられなかった。まるで、心も記憶も欠落して肉体だけが残っている抜け殻のように。
一体この平和な日本のどんな場所で過ごし、どう生きていたらこんな風になるというのだろうか。いっそ痛ましく思えるほどに、彼には何もなかった。
これでは仮に親が見つかったとしても・・・その親はまず間違いなくまともな親じゃない。何せ彼がこうなった原因は親の方にある可能性が高いからだ。いやむしろ―――捨てられた?



士郎の考えが纏まらないまま警察が来た。現在の所彼と思われる子供の捜索願は無いらしい。彼が自分の名前さえ思い出せないと知った警官は困った顔をしている。

「弱りましたね・・・名前も分からないんじゃ探すのは相当な手間ですよ」
「彼は・・・これからどうなるんですか?」
「何せ身元が分かりませんからね・・・規定では市長もしくは当事者のつけた名前を基に家庭裁判所で戸籍を作成します。保護者が居なければそのまま児童養護施設に送られますかね」

無論身元が判明すれば話しは変わりますけど、と警官は付け加えた。

「・・・その保護者というのは、私でもなれますか?」
「え?ええ、裁判所の方で手続きすれば・・・」

士郎は悩んだ。だがしかし、彼にはどうしてもあの少年を放っておくという選択肢を見つけることが出来なかった。
彼は相変わらず空虚な瞳で成り行きをじっと見つめている。自分がこれからどうなるかなど興味がないとでも言うかのように。だが、それは間違っていると士郎は思う。
子供というのはもっと笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり、照れたり・・・そんな風に感情をさらけ出しているべきだ。ましてや感情が分からないなどという事は、子供以前に人間にとってこれ以上なく不幸なことだ。感情を理解できないままでは、あの子の未来の可能性を間違いなく潰すだろう。

彼に何があったのか、私は知らない。彼が何を思ってこちらを見つめているのかも。
或いはひょっとして、記憶がないという嘘をついて自分の殻に閉じこもっているのかもしれない。
だがそれでも、例えそれが自分勝手な願いであろうとも、士郎は彼に笑ってほしいと願った。

ポケットから携帯電話を取り出した士郎は、妻である桃子に電話を掛ける。

「はーい!何かしら、あなた?」
「ああ、桃子。実は―――」



数日後、高町家に新しい家族が迎え入れられる。


名前を、高町黒衣(たかまちくろえ)と言った。


続く・・・?
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