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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
騎士の力を得た少年のお話・2
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となっている》
『・・・・・・カッコいい名前だね』
《どうかしたか?》
『何でもないよ』

名前あった。せっかくキムタクとかトンヌラとかいろいろ名前考えてたのに・・・



 = = =



「名前は・・・・・・名前、何だっけ・・・」
「・・・!?」

まるで今気付いたかのように首を傾げる少年に、私は正直驚きを隠せなかった。
昨日の晩御飯に何を食べたのかを忘れてしまった程度のことであるかのように喋る彼の姿は、少なくとも私にとっては普通には見えなかった。
やがて自分の名前を思い出そうとしきりに頭を捻り、申し訳なさそうに少年は思い出せないと謝ってきた。その目に嘘は感じられず、本当に自分の名前を忘れているのだと分かった。
まさか、といやな予感が脳裏をよぎる。

「・・・今までどこにいたかは?」
「・・・分かりません」
「家族や、友達は?」
「・・・・・・多分、居たと思います。良く覚えていません」
「誕生日とか、年齢は覚えてないかい?」
「・・・すみません」

謝るのはこっちの方だと叫びたくなった。何という事だろう、彼は自分の事を全く覚えていなかったのだ。

(記憶喪失・・・!)

今日ここに来たのは、恭也に頼まれて助けた少年の様子を見に来たというだけだった。だがここにきて事態は急変した。何が原因かも良く分からない理由で倒れていた少年には、自分の記憶がすっぽり抜けていたのだ。

だが私が何よりも気になったのは、少年の態度だった。
状況は飲み込めているはずなのに、まるで動揺を見せない。普通自分の名前が思い出せないなどという異常事態に陥れば少なからずショックを受けるものである。だが彼は「小テストの回答が思い出せない」程度のリアクションしか起こしていなかった。

そう、まるで―――”思い出さない方がいい事”と考えているかのように見えた。



面会を許可してくれた医師の先生にいましがたの事を伝え、すぐに彼の記憶について検査してもらった。
結果、彼からは思い出を司る『エピソード記憶』と一般常識などを司る『意味記憶』のうちエピソード記憶の方が大きく欠落していることが解った。原因は不明。少なくとも怪我によるものではない事だけは辛うじて解った。

「考えられる可能性はここに運び込まれたときの症状によって脳への血流が不十分になったこと・・・または心因性、つまり強い心的ストレスから逃れるために思い出さないようにしているのかもしれません」
「これは・・・一先ず警察を頼るしかありませんかね」
「ええ。ですが・・・彼の持ち物に名前などの分かるものは一つもありませんでした。ひょっとしたらこのまま身元が分からない可能性も・・・」

少年は無言でこちらの様子を見ている。その不安の一言も発しない姿が、
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