第四十六話 また一人その六
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「後な」
「後って?」
「こいつ今テーブルにあがってるだろ」
「はい、確かに」
猫はテーブルの上を悠然と歩き回っている。そのうえで上城にも顔を向けて興味ありげな顔を見せている。
その猫を見て彼も言う。
「僕の方も見てますね」
「こいつ結構人懐っこいからな」
「そうなんですか」
「ああ、そうなんだよ」
こう言うのである。
「悪戯も多いけれどな」
「人懐っこいんですか」
「家族に可愛がられてるしな」
中田はこう言ったがすぐにその顔を曇らせてしまいこう訂正した。
「いや、可愛がられてたな」
「そうですか」
「まあこの話はなしな」
顔をすぐに明るいものに戻して言う。
「暗いのもあれだしな」
「中田さんには似合わないからですね」
「明るいのが好きなんだよ」
その明るさを取り戻した顔での言葉だ。
「だからこうして暗い話はな」
「されないんですね」
「ああ、そうしてるよ」
こう言うのだった。
「後はな」
「後は?」
「食おうな」
料理に話を戻した。
「肉は一杯あるからな」
「そうですね。言われてみれば」
肉はテーブルの中央に置かれた皿にうず高く積まれている。スペアリブのそれを見てこう言う上城だった。
「凄い多さですね」
「肉はちょっとやそっとじゃなくてな」
「大量にですね」
「そうだよ。たっぷり食わないと駄目なんだよ」
「お野菜もですね」
「これもな」
テーブルにはボイルドベジタブルもある。人参にブロッコリーにアスパラガス、キャベツそれにジャガイモといったものがやはりうず高く積まれている。
その野菜達を見て中田はまた言う。
「どんどん食ってくれよ」
「はい、特にキャベツがいい感じですね」
上城はよく茹でられたキャベツの葉を見ながら答えた。
「如何にも美味しそうで」
「だろ?あと野菜を茹でた後はな」
「スープになりますよね」
「それは明日飲むんだよ」
やはり目を細めさせての言葉だ。
「これがまた身体によくてな」
「しかも美味しいんですね」
「そうだよ。スープも身体にいいんだよ」
「ですよね。それにしても中田さんは」
「食べ物に気を使ってるっていうんだよな」
「はい、お金は」
「剣士で戦ってるとそれ位何とかなるさ」
問題はないというのだ。
「生活費は楽さ」
「そうですか」
「一回戦ったらのべ棒が何本も手に入るだろ」
「少なくとも五本か六本は」
上城はそのうちの一本だけ受け取りその他は寄付している。この辺りそうしたことには興味のない彼らしいと言えばらしい。
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