第四十六話 また一人その五
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「家猫でさ」
「あっ、家猫なんですか」
「外には出してないんだよ」
「そうなんですか」
「外に出すと車に撥ねられるしな」
この心配はどうしてもある。猫は外に出ると車に撥ねられてしまうことが多い、犬よりもその危険は遥かに高い。
「それが怖いからな」
「家猫にしてるんですか」
「それに家全体が縄張りになるしな」
家の大きさによるが家全体ならというのだ。
「それで縄張りも充分なんだよ」
「だから家猫でいいんですね」
「そうさ。で、こいつの食べものな」
「何なんですか?」
「キャットフードだよ」
やはり猫を撫でながらの言葉だ。その背中をいとおしげに撫でて見ている。
「いつもそれ食わせてるんだよ」
「お魚とかじゃないんですか」
「実は魚とか鳥とかこいつ食わないんだよ」
「えっ、そうなんですか」
上城は中田の今の話に少し驚いた。その猫を見てからまた問い返した。
「猫ってやっぱり」
「魚とか鳥食うものだって思うよな」
「はい、そう思いますから」
「けれどこいつは違うんだよ」
今も猫を撫で続けている。食べながらであるが。
「どうしてもな」
「魚や鳥は食べないんですか」
「それでキャットフードしか食べないんだよ」
「ううん、そうなんですか」
「それでキャットフードも特別なものでな」
上城に対して笑顔でさらに話す。
「鮪の高いのしか食わなくて」
「その鮪のお陰ですか」
「みたいなんだよ。ミルクも猫用でな」
「それでその毛並みですか」
「ああ、そうなんだよ」
猫のことをこう上城に話す。そしてだった。
中田は犬の鳴き声がした方に顔を向けてこうも言った。
「で、あいつもな」
「犬もですか」
「やっぱり高いドッグフードなんだよ」
「焼いたお肉とかはですか」
「おやつでささみの加工したの、ペットショップにあるだろ」
「あっ、何かありますね」
上城もペットショップのことは知っている、だから言ったのである。
「そういうのをですか」
「ああ、偏食って言えば偏食だけれどな」
「高いドッグフードですか」
「ラムアンドライスな」
中田はドッグフードの種類も話した。
「それが好きなんだよ」
「それでそういうのを食べてですね」
「毛並みとかがいいんだよ」
「犬や猫もいいものを食べてこそですか」
「それに適度な運動とストレスをかけないことだな」
その二つも大事だというのだ。
「ちゃんとな」
「動物も本当に同じなんですね」
「そうだよ。繊細だしな」
「犬も猫も繊細とは聞いてますけれど」
「大事にしないと駄目なんだよ」
中田がこう言うとまた同時だった。今度は猫も鳴いた。
その鳴き声の中で中田は目を細めさせて食べながら話す。
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