第三十一話 怪談話その十
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「人に牛よね」
「そうなるわよね」
「つまり字自体がなのね」
「件っていう妖怪を表してるんだな」
「そう言われたんよ、うちも」
高見先輩はまさにその通りという顔で四人にも言う。
「妖怪の姿がそのまま字になったって」
「ううん、じゃあ件って本当にいるんですか?」
「字になってるってことは」
「らしいで」
実際にそうだというのだ。
「ときたま牛から生まれて地震が起きるとか予言してすぐに死ぬらしいで」
「ですよね、確か第二次大戦の時にも出て来たらしいですね」
里香はあの戦争の時にも出て来たとここで言った。
「そう聞いてます」
「うちも先生にそう言われたわ」
「あの戦争にも出て来て」
「それで予言したってな。それでな」
「はい、牛女ですね」
「こっちは人と人の間に産まれたんや」
それで頭が牛、身体が人だったというのだ。尚この姿はギリシア神話のミノタウロスと同じ姿であることはギリシア神話を知っていればすぐに察しがつくことであろう。
「件と逆にな」
「そうなんですね」
「それで家から逃げてや」
「神戸の山中にいるんですね」
「六甲のな、ただな」
「ただ?」
「この話先生から聞いた話やけど」
高見先輩は無意識のうちに顔をぐっと前に出した、そして言うのだ。
「東京の話やで」
「東京?神戸じゃないんですか?」
里香もこの話には目をしばたかせて問い返した。
「牛女のお話ですよね」
「それでもやねん、その戦争の時にな」
第二次世界大戦、その時にだというのだ。
「東京で空襲あったやん、神戸でもどえらいのあったけど」
「東京大空襲ですか?」
「その空襲やで」
まさにそれだと、里香に返す。
「十万人死んで東京のあちこちが燃えた空襲でな」
「?何があったんじゃ」
高見先輩の話を横で聞いていた宇野先輩もここで怪訝な顔になって言った。
「一体」
「まあ話聞いてや、家が燃えたら人が焼け出されるやろ」
「火事でもそうじゃな」
「それで偉いさんのお家も焼けて」
「まさかその偉いさんのお家に?」
「らしいねん、偉いさん達の家から家に移されて保護されてたらしいその頭が牛で身体が人の牛女が空襲の後の東京歩いてたらしいねんや」
「それほんまけえ」
宇野先輩はこれ以上はないまでに怪訝な顔になって高見先輩に問い返した。
「幾ら何でも嘘じゃけえ、それ」
「話したん上野先生やで」
「あの先生かいな」
「あの先生こういうので嘘言わんやろ」
「というかあの先生嘘言わんわ」
誠実な先生だというのだ、宇野先輩も話した先生の名前を聞いてこう返す。
「絶対にな」
「そやったらこの話嘘や思わんやろ」
「あの先生が嘘言わんかったら先生がこの話をほんまって信じてるかや」
つまり話自体が嘘だと
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