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万華鏡
第三十一話 怪談話その九
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「そうした話があるで」
「山も怖いんですね」
「そっちは猿なんですね」
「そやねん、そやからうち子供の頃山が怖かってん」 
 狒々の話を聞いてだというのだ。
「他にも山って山姥とかおるやろ」
「鬼婆ですか?」
 彩夏は山姥と聞いてこの妖怪を出して来た。
「それですか?」
「ああ、l殆ど同じやな」
「どっちも山に住んでいて人を食べるお婆さんの妖怪ですよね」
「そやな、そっくりやな」
「そもそも山にお婆さんが一人でいるって異様ですけれど」
 これ自体が有り得ないことである、少し考えると。
「その妖怪のこともお聞きしてですか」
「山怖かったんや」
 岡山人の言葉である。
「むしろ海よりも」
「そうだったんですね」
「広島もじゃ」
 今度は宇野先輩が話してきた。
「こっちもそういう話あるけえ」
「やっぱり狒々ですか?」
「それか山姥ですか?」
「いや、ヒバゴンじゃ」
 それだというのだ。
「広島はこっちじゃ」
「ヒバゴンって確か」
「あれよね」
 五人はこの名前を聞いてそれぞれ顔を見合わせて話した。92
「あのUMAよね」
「広島の比婆山に出るっていう」
「あの話聞いてなんじゃ」
 それでだというのだ。
「わし山怖かったんじゃ」
「ううん、何か狒々と似てますけれど」
「そのヒバゴンの話を聞いてですか」
「ヒバゴンは人を取って食べるって噂があったけえ」
 こうした手の話ではつきものの噂だ、真相は不明にしても。
「だから怖かったんじゃ」
「ううん、山もですね」
「そんなお話多いですよね」
「神戸にもあるやん」
「わし等が今おるところも」
 その町もだというのだ。
「牛女おるやん」
「あと四つん這いで走ってきてバイク追っかけてくるやつ」
 こうした妖怪達が挙げられてきた。
「八条学園だけやなくて」
「神戸にもじゃけえ」
「牛女ですよね」
「あの妖怪ですよね」
「あれこうした話があるねんで」
 高見先輩は五人にあらためてという口調で話した。
「最初は普通の人の子供として産まれたらしいんや」
「それでなんで牛なんですか?」
「牛の頭なんですか?」
「件って言葉あるやろ」
 今度は漢字だった、比較的よく使われる部類にある字だ。
「あれ、国語の先生に聞いたんやけれど」
「あっ、そうですね」 
 ここで里香が言う、はっと気付いた顔になって。
「あの言葉は」
「知ってるんやな」
「はい、件っていうのは妖怪ですよね」
「そう言われてん、頭が人で身体が牛のな」
 牛女の逆だ、その妖怪だというのだ。
「それが感じになったんや」
「そういえばあの字ってね」
「そうよね」
 里香以外の四人もここで再び顔を見合わせて話す、件という字を解体させてみるとどういっ
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