第三十一話 怪談話その八
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また風呂と夕食、それからだった。
部屋で浴衣姿になって先輩達と話す、その中で。
先輩達は五人から海の怪談を聞いてこう言った。
「広島は山も多いけえのう」
「岡山もやで」
「そやから山の妖怪の話もあるで」
「山も怖いんやで」
二人で五人に言って来る、特にここは高見先輩だった。
「岡山の山のところで昔は美作っていうたけれどな」
「随分昔の地名ですね」
「信長の野望にも出て来ましたね」
「そこに出たんや、狒々がな」
ここで出て来たのはこの妖怪である。
「退治した話があるで」
「狒々ってあの?」
彩夏は狒々と聞いてこう言った。
「大きな猿の妖怪ですね」
「それや、動物園にいるのとちゃうで」
そのヒヒとはまた違うというのだ。
「わかってると思うけどな」
「あのヒヒも怖いですけれどね」
「凶暴ですよね」
「猿は怖いで」
高見先輩はこのことは真顔で言う。
「それもかなり」
「ニホンザルもですよね」
「チンパンジーも」
「そやろ、あの位の大きさの猿は怖いねん」
マンドリルにしてもだ、実は猿は凶暴なのだ。
「むしろゴリラとかオランウータンの方が大人しいで」
「ゴリラってそんなに大人しいんですか」
「めっちゃ大人しいで」
高見先輩は琴乃にもこう話す。
「全然抵抗せん位にな」
「そこまで大人しいんですか」
「棒持って行くだけで捕まえることが出来るんや」
そこまで簡単にだというのだ。
「ほんま楽にな」
「捕まえられるんですか」
「そやねん、ゴリラはな」
「あっ、そういえばゴリラって」
ここで琴乃も気付いた、ゴリラのあることに。
「完全なベジタリアンですよね」
「肉は絶対に食べへんで」
「そうですよね、ゴリラは」
「ほんまに野菜とか果物しか食べへんから」
「草食動物って大人しいですからね」
「ゴリラもそやねんで」
無抵抗なまでに大人しいというのだ。
「しかも優しいねんで」
「ううん、外見からはそうは思えないですけれど」
「顔だけや、怖いのは」
人間にもよくある話だ。
「それもあるねんで」
「そうなんですね」
「そやからヒヒは怖いで」
動物園のそれの話に戻る。
「妖怪の狒々も怖いけどな」
「それでその狒々がでるか」
「出て来てそれで生贄要求してきたんや」
「物凄く悪い奴だったんですね」
「若い娘を要求してきてや」
こうした手の話にはよくあることだ、それが実際にあってだというのだ。
「村人を苦しめてたんや」
「それでその狒々どうなったんですか?」
「退治されましたよね」
「岩見重太郎に退治されたで」
「あの大坂の陣の」
「そや、その人に倒されたんや」
高見先輩は五人に話していく。
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