第十五章 予言の神秘
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ヘリにお乗り下さい。それと、この女を見張っていて下さい。」
杉田の視線は女のつま先からゆっくりと上に向かい、胸の膨らみで止まった。恐怖で男が駄目になってしまったかと思っていたが、今はそれなりに欲情を覚えた。覚悟ができたのか、杉田は恐怖が少し和らいでいるのを感じた。女の腕を掴んでヘリの後ろ座席に押し込み、自分も続いて乗り込むと思い切りドアを閉めた。
もうすぐ満がやってくる。ぞくぞくと背筋に嫌悪感が走った。あの野獣のような声、あの美しい顔から信じられようなしゃがれた声を発する。野獣としか思えない行為、殺戮を楽しんでいるのだ。
しかし、今しばらくは付き合うしかない。予言と言う大いなる神秘に触れる喜びは、満と向き合わねば得られず、常に重苦しさとおぞましさを伴った。予言の鍵は満の心の中に秘められており、あの小さな口を通して語られるのだ。
満の口から天の声が届いたのは満の声変わりがはじまった頃だ。その声は自らをペトロと名乗った。ペテロという名は、キリストの12使徒の一人だということぐらいしか知識はなかった。満の性癖が性癖だけに最初は疑ってかかったものだ。
しかし、ペトロは言う。邪悪な精神に宿る純粋な魂、それが満だと。その魂があるからこそペトロは降りてきたという。半信半疑であったのは一月ほどに過ぎない。ペトロの予言は正確だった。未来の出来事を、場所、日時まで言い当てたのだ。ペトロに対する疑いはそれが金につながると確信したときから消えうせていた。
信者は飛躍的に増えていった。それに伴いお金が入ってきた。次第にそれは膨大な金額になっていった。信じられなかった。巨額な資金が出来、その資金を市中金融に流した。もはや何も恐れるものはなくなった。
しかし、おかしなことだ。そのペテロの正確無比の予言に恐れを抱くことになるとは。日本、米国、そして欧州で地殻に大変動が起こり、陸地はその姿を変え、多くの民族が海の藻屑と消える。僅かに生き残った人々がその血脈を残すことになる。
満を富良野に連れていかなかったのは、新たな大地で再出発する人々から満の犠牲者を出したくなかったからだ。予言能力は最後の予言を境に失われたと言っても尊敬を失うことはないと判断した。
それが思ってもみない事態に陥った。なにもかも、予想を超えていた。あのこともそうだ。ふと涙に滲んだ。何故、香子は自分を裏切ったのだ。信じられなかった。自分を心から尊敬し愛してくれていた。それが何故。
あんな卑賤な職業の男に会って心を奪われた。だから殺した。殺されて当然だった。思わす興奮して指に持っていた煙草を握りつぶした。悔しさで目に涙が滲んだ。しかし、それも一瞬だった。重い現実が目の前に横たわっている。
満は最も肝心な時期と安全な場所を変えて杉田に伝えたと言う。そんなことが本当に可能なのか?あのペトロが
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