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予言なんてクソクラエ
第十五章 予言の神秘
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た。
「さあ、ここで冷凍庫の中に入ってくれ。中に入って外から見えない所に身を隠すんだ。万が一にも奴らが中を覗くことだって考えられる。」
 石井は冷凍庫の中に入った。横尾がドアを閉めた。中は真っ暗闇になった。冷気が肌を刺す。乱暴な運転で積んである荷物が滑って落ちた。しばらくして、車が止まった。恐らく悟道会ビルに到着したに違いない。坂を下る。キキキーといタイヤの軋む音がして、完全に止まった。
 ドアが開かれた。横尾がにやにやしながら片目をつぶった。どうやらOKらしい。ゆっくりと車から降り立った。広い駐車場だ。その割りに駐車する車はまばらだ。横尾が言うには在家信者たちが使用するスペースだという。
「上手くやれよ。納品はあのドアだ。あそこから忍び込むのは難しい。警備員が常に二人張り付いている。磯田さんはこの駐車場で過ごし、翌日、また俺が拾って引き上げた。あんたはどうする。」
「明日、僕がこの時間に現れなかったらそのまま引き上げて下さい。」
横尾が台車に荷物を載せ納品所に向かった。今のところ人の気配はない。磯田が言っていた。「教祖が帰って来た。」と。ということは、教祖はここから出入りしている。ここの出入り口を見張ることだ。ぐるっと辺りを見回した。30メートル先にエレベーターがある。
 よし、あそこだ。エレベーターに近付いた。大型のトラック、今時珍しい幌付きが好都合にも置いてある。恐らく磯田もあそこにもぐり込んだに違いない。車のエンジン音が響いた。急いで幌の中に飛び込む。
 幌の隙間から覗くとジープから坊主頭の3人の精悍な男達が飛び降り、エレベーターへ駆けつける。先に乗った男がボタンを操作した。ドアが閉まる。エレベーターの行方を視線で追う。6階、7階とボタンの光あがってゆき突然消えた。8階のボタンに明かりが移らない。
 何かがある。その何かを確かめるしかない。何度も揺れが襲ったが、それほど恐ろしくはなくなっていた。神にゆだねると心に決めたからなのか。また車が入ってきた。二人の若者がなにやら喋りながらエレベーターに向かった。
 ひ弱そうな若者達だ。エレベーターに乗り込む。また観察する。一人は7階で、もう一人は8階で降りたようだ。7階と8階の間に何かがあると見当をつけた。しかし、そこに行き着くためには何かしら操作があるはずだ。それを探るしかない。
 
    (二)
 杉田啓次郎は知らせを聞いて、屋上に出た。いよいよ迫っている。最後の時が。屋上から東京の街を見下ろした。これで見納めだと思うと一抹の寂しさが心をよぎった。この喧騒と猥雑さに満ちた街、それはそれで楽しみもふんだんにあった。
 待ち受ける未来は決して甘いものではないが、何とか生き抜いてみせる。声がして振り向くと片桐が、後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた女を連れて走ってくる。
「教祖さま、
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