第十四章 地獄からのメッセージ
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「いったい何でした。」
「ヘリコプターだ。アエロスパシャルAS350B、最大127ノットだから、時速240から250キロ。6人乗りで、航続距離740km。富良野まで一っ飛びってなわけにはいかないが、そうとう遠くまで行ける。」
「大災害発生の前に飛び立つ。そして地震が収束したら安全な場所に降り立つという寸法ですか。」
「まあ、そんなところだろう。とにかく教祖があのビルにいることは確かだ。恐らく満も一緒だろう。」
「ということは、やはり、あのビルに侵入するしかない。しかし、警備が厳重で入り込む隙もない。さっき昼間から詰めていた警備員全員が交代した。ってことは、警備は24時間体制ってことです。」
「つまり地下駐車場には絶対秘密がある。警察が見逃した何かだ。」
うーんと二人で唸った。腕組みして考えた。何かよい知恵はないものか。まてよ、と石井は思う。すっかり忘れ去れていた磯田薫の顔が突然浮かんだ。
「叔父さん、磯田さんに知恵を借りたらどうでしょうか。あの人、そうとう詳しく教祖の動向をつかんでいました。もしかしたら上手い方法を見つけたのかもしれません。」
「そうだ、あいつなら抜け道を探り出したかもしれん。早々に電話しろ。」
「でも、づっと留守電で返事もないって山口が言っていました。」
「よし、真治の携帯を貸せ。」
磯田の番号を押して携帯を渡すと、例のごとく音声が留守電話であることを告げている。苛苛としながら、龍二は出番を待っている。そしてピーという音とともに怒鳴った。
「この馬鹿野郎、すぐさまこの番号に電話してこい。いいか、よく聞け。もし電話してこなかったら、今度戻ってきても、絶対に事務所に入れんからな。よく覚えておけよ。」
携帯を切ると、にやりとして言った。
「あいつは間違いなく頻繁に留守電をチェックしている。そういう奴だ。すぐにでもかかってくるはずだ。どっちに転んでも生き抜くつもりだ。つまりゴキブリ野郎さ。」
そう言うと立ち上がりバックを肩にかけた。
「またどこかに行くんですか。」
「いや、家に帰る。女房が怖がっている。一人にしてはおけない。真治に付き合えるのもここまでだ。後は真治だけで五十嵐さんを何とか助け出せ。」
「ええ、そうします。すっかり叔母さんこと忘れていました。ここまでお付き合いいただきまして有難うございました。」
「おいおい、他人行儀なことは言うな。全てすんだらその五十嵐さんを家に連れてこい。一緒に一杯やろう。」
さっと背中を向けて歩き出した。今生の別れかもしれない。そんな思いが二人にはある。もう一度顔を見たいという思いを募らせたが、涙もろい龍二はそうした愁嘆場を常に避ける。龍二の気持ちを汲むしかない。声を掛けたい気持ちをぐっと抑えた。
しかし、大事なことを思い出した。しかたなく、声をかけた。
「叔父さん、
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