第十三章 仮面
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に設けられたモニター室は、片桐の自慢の作だった。ビルの50箇所にカメラが設置され、モニターテレビで昼夜覗けるようになっていた。設計も片桐に任された。秘密の階にも五箇所カメラが設置されていた。
その日、完成間近のビルに泊まりこんだのは、最後の調整にてまどり二日も徹夜したソフト会社の社員が床に寝ると言い出したからだ。帰るのも面倒だったし、長い付き合いだったこともあり、壁に二台のベッドが収納されている片桐の執務室に案内した。
夜中の12時過ぎ、眠れずにいた片桐は、秘密の階に侵入者が入ったことを示すサイン灯を認めた。片桐は起き上がり部屋を出ると、満が監禁されている階の五つのモニタースイッチをいれた。その中の一つの画面に片桐の視線がくぎ付けになった。
満のベッドルームに侵入者がいた。警棒をつかみ満の部屋に駆けつけようと立ち上がったその時、侵入者の横顔がちらりと見えた。その侵入者は教祖だった。ほっとして椅子に腰を落とした。
普段、息子に少し冷たいのではないかという印象をもっていたが、やはり親子なのだと思うと心が和んだ。このまま覗き見するのは失礼だと思いモニターのスイッチを切ろうとした矢先、眠りこける満に教祖が話しかけた。
「深い深い眠りの中で、あなたの魂はさらに深い深淵に落ちてゆく。そこであなたはアカシックレコードにアクセスすることができる。さあ、アクセスを開始して下さい。今日のターゲットは文京区に住む赤井次郎。彼の悩みは何か?また彼の心の恥部はなにか?あなたは詳細に述べることが出来る。」
その後に起こった光景に、片桐は度肝を抜かれ、ただ呆然とモニターに見入るばかりだった。満が目を閉じたまま喋っている。まるで地獄から響いてくるようなその声に背筋が凍った。なんども生唾を飲み込んだ。
片桐は、その日、区議会議員、赤井次郎が無理矢理予約を入れてきたのを丁重に断っている。教祖の面会は一週間前と決められていたからだ。しかし、何らかの事情で教祖は片桐を通さず、赤井と会う約束をしてしまったのだ。
教祖は、誰か大物から要請があり、引き受けざるを得なくなった。やむなく車を飛ばしてここまでやってきたのだ。モニター装置作動が一週間も早まったことも、片桐が泊り込んでいることも知る由もなかったのだ。
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