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予言なんてクソクラエ
第十三章 仮面
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なんだ。権力が悟道会を潰そうとする罠だ。その罠にはまって君らは教祖様を裏切ろうというのか。」
自分の不明を恥じ、誰もが涙を流し始めた。片桐は声を振り絞り、感極まった素振りで言った。
「もういい、君たちのことはよく分かっている。教祖様がさっき話された通り、誰もが試される。その時どう行動するかで、その人間の価値が決まると。神はそれを見ている。さあ、今、満さんに4人の仲間が張り付いている。そろそろ交代の時間だ。」
メンバーは、涙を拭い、「はっ」と言って部屋を退出した。一般信者数名もぞろぞろとそれに続いた。一安心という表情を浮かべている。片桐は額に浮いた脂汗を手の甲で拭った。 
 片桐の心は恐怖で震えていたのだ。巨大地震が迫っている。満は父親宛ての手紙の中で、この群発地震の始まる日時を言い当てていた。ということは、その手紙に書かれるように、地鳴り、次いで震度6強の直下型地震が起これば、最後に地面が1メートルも波打つ巨大地震が間違いなく現実のものとなるということだ。
もし、そんな巨大地震が起これば、最先端の耐震装置を導入しているこのビルとてひとたまりもない。生き残る者は皆無であろう。ぞくぞくという恐怖が背筋を這い登る。満がこのビルに帰ってくるその時こそ巨大地震の正に直前なのだ。
 満を公園で救い出し、別の公園で車を乗り換えたとき、満は一緒に来ようとはしなかった。その場を離れる寸前、片桐の耳にそっと語りかけた。
「大災害は僕があのビルに戻ってから30分後に起こる。何日に戻るかは教えられない。いずれにせよ近いうちだ。あのビルで待つように親父に言うんだ。」
 片桐はかつて公安の刑事だった。潜入捜査が専門で悟道会に信者として入りこんだ。まさにミイラ取りがミイラになったわけだが、それにはそれなりの理由があった。ある日のことだ。教祖が近付いてきてこう言ったものだ。
「どうだ、捜査の方は順調に進んでいるかね?」
見破られた知って声も出なかったが、教祖の次の言葉は驚愕以外の何ものでもなかった。
「君は腕力がありそうだから、僕のボディガードをやってくれんかね。警察には何でも報告してもかまわん。僕の近くにいたほうが情報は取り易い。そうだろう。」
そして、側に仕えて初めて教祖の偉大さに触れることになった。何でも知っているのだ。片桐の記憶にしかないはずの事実を指摘されたのは一度や二度ではない。小学生の頃、凧揚げしていて肥溜めに落ちたことまで知っていた。
 財界人、政治家、文化人、ありとあらゆる人々が相談に訪れる。何も聞かずに、相談者の悩みを言い当て、そして助言する。そんなことは朝飯前なのだ。まして言い当てた予言の数々は誰もが驚嘆するほど正確無比だった。片桐は教祖に仕えて1年で警視庁を辞めた。 しかし、満をこのビルに監禁して一月で教祖の化けの皮が剥がれた。
秘密の階
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