第十三章 仮面
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り方が乱暴過ぎた。問い詰められれば答えに窮しただろう。
それに動揺するのは当たり前だ。この群発地震に恐れをなしているのだ。誰だって不安に駆られる。長い沈黙にたまりかね、信者の一人が声を発した。
「片桐さん、噂では北海道のどこかにノアの箱舟が建設されたと聞きました。主だった人達はみんなそっちに行っているって。もうそこまで迫っているんじゃありませんか?本当のことを教えて下さい。」
とうとう来たかという思いが片桐を落ち着かせた。それがこの騒ぎの原因だったのだ。ふんと鼻で笑って答えた。
「主だった人達に、俺が入っていないってことだ。」
「いえ、そんな意味では・・・」
「じゃあ、教祖様はどうだ。教祖様は主だった人じゃないのか。」
片桐はつかつかと電話機に近付き受話器を取り上げた。教祖が出た。
「教祖様、ちょっとよろしいでしょうか。モニターをつけさせて頂いても・・・。」
「かまわん。」
パチンとスイッチをいれると教祖の部屋で受話器を握る男が映し出された。片桐が皆に見るように顎で促した。皆、ぞろぞろとモニターの前に集まってくる。そして片桐と教祖が騒動について話し合う画面に見入った。教祖が受話器を置いた。片桐が皆を振り返った。
「お前らは、何度も教祖様の部屋に入ったはずだ。」
親衛隊隊員はみな頷いている。
「だったらモニターに映し出されたあの部屋がこのビルの教祖様の部屋だってことは分かったはずだ。後ろの窓から見える風景も同じだった。」
親衛隊の隊員の一人が答えた。
「でも、警察が一日がかりで捜したが見つからなかったと聞いています。その時、教祖様はいったい何処にいらしたのですか?」
片桐がにやりと笑った。
「教祖様は何もかもお見通しだ。今日の事態も予想されていたのだ。教祖様の千里眼は君達が一番よく知っているはずだ。そのための準備も怠りなかった。ここまで事態が逼迫したのだから君達にもこのビルの仕掛けを知っておいてもらう。後で重雄が説明する。」
重雄が頷いた。皆が一様に胸を撫で下ろしているのが分かる。もう心配はない。片桐が皆を睨め回す。一様に俯いて、自らの動揺を恥じ入り、ちらちらと上目遣いに片桐を見る。片桐が声を張り上げた。
「もしそんなノアの箱舟が建設されて、大災害が迫っているなら教祖様がこのビルにいるのをどう説明する?」
片桐は親衛隊員一人一人の目をじっと見つめる。身も世もないほどに身を縮めて顔を伏せる。そして続けた。
「教祖様は、ご子息の無罪を信じて権力と戦おうとしておられる。君たちはその教祖様と共に戦う戦士なんだ。その誇りと自覚を持ってくれ。」
感極まって泣き出す者が現れた。涙は伝染する。親衛隊には最後までその役割を果たしてもらわねばねばならない。片桐は皆を見回して言う。
「権力はどんな嘘も真実に変えてしまう。いいかこれは罠
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