第十章 神と霊
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「でも、その大災害の予言は当たらなかったわけですね。」
「ああ、当たらなかった。でもその不安たるやなまじっかなものじゃなかった。だからといって逃げる訳にもいかず、そのXデイも会社でひやひやしながらその時を待った。しかし、何ごともなく通り過ぎたんだ。その預言者だって何度も未来を予言して的中させていたんだ。だけどその予言だけは外れた。本当に不思議だった。」
「本当ね。結局、未来は神の領域だから人間や霊が関わってはいけないのよ。」
石井は佐々木の言葉に、一瞬息を呑み、目を丸くして訊ねた。
「佐々木さんの今の言葉、予言は神の領域だっていうのはどういう意味ですか。」
「どういうってこともないけど、その預言者はある霊から未来を見せられていたの。でも、本当の未来は神のみぞ知るってことよ。あの日、その人が私達に言った言葉はこうよ。皆さんは私も含めて神に試されてるってね。つまり神は霊の上にいるってことよ。」
龍二が合いの手をいれた。
「そうだ、あの人はこうも言っていた。その時、つまり大災害の時、何をするか、人のために何をしてやれるかでその人間の価値が決まるってね。神はそれを見ているって。あの人は神が宇宙そのものだと言っていたが、本当にその通りだと思う。」
「神が宇宙……?」
「うん、そう、神イコール宇宙。」
「宇宙を創造した神が、宇宙そのもの?うーん、分かったような分からないような。でも、それを聞いて僕もすこし気が楽になりました。僕らは神に抱かれているって訳ですよね。よし、死ぬ時はご一緒しましょうか。」
佐々木がちゃちゃを入れた。
「真治さんの側で死ねるなら本望よ。」
「あれ、俺より真治のほうがいいってわけか。」
ガハハハハという佐々木の笑い声で、真治の心に重く立ち込めていた暗雲がすっかりと消えてしまった。龍二が真顔に戻った。
「おい、予言の話はこれくらいにして、その坂口さくらと一緒にいたかもしれないという少年の情報を警察に知らせなくては。」
「そうですね、榊原警部補に電話してみます。」
石井は携帯をとりだし、その場でかけた。何度目かの呼び出し音の後、
「はーい、榊原です。どうした石井、何かあったか。」
と間延びした声が響いた。
「今、よろしいですか。」
「ああ、かまわん。一人で一杯の個室にいる。」
トイレだとすぐに分かったが、それまでの三人の和んだ雰囲気が口を軽くしていた。
「えっ、個室ビデオですか、榊原さんも歳の割りに好きですね。」
「馬鹿野郎、俺がそんな辛気臭い所になぞ行くか。」
その前を通る度にちらりと看板を盗み見ている榊原が怒鳴った。
(二)
書類を仕上げようとするのだが、五十嵐昌美は先ほどから何度も同じミスを繰り返していた。そわそわと心が落ち着かす、胸の動悸が耳にまで響いてきそうだった。「あの人に
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